Fate 50
- 2008/05/30(Fri) -
ウサギのルビーを見に忍び込んだと語る王女を前に、
姿を隠していた理由を、どう説明するべきかと、藤也は頭を悩ませていた。

(―――うぅ……っ)

何しろ、彼女のバックには一癖も二癖もありそうな母親がいるのだ。
迂闊なことを口にするわけにはいかない、と痛切に感じるものの、
こういう時はなおさらに、これといった名案はすんなりと思い浮かばないもので、
すっかり困り果てていた。

「……もしや、わらわは見てはならぬものを見てしまったのか?」

綺麗と思う顔の眉間に皺を寄せたままの姿を見つめていた王女は、ふと呟いた。
そう問われて返答に困り、セシアに向かって苦笑を漏らせば、
突然、しゃがみこんでいる藤也にガバッと抱きつき、
「大人は何を考えているのかわからぬ」
愚痴を零すように囁きを零した。

そうして顔を藤也の平たい胸に埋めていることに、違和感を持たないまま、
歳相応の甘えを見せるかのような仕草を見せている彼女からは、
微かではあるが、王家特有といわれる香が漂い始めている。
その淡く、儚げな香りは庇護欲をことさらに刺激し、
そしてあるはずのない、まるで母性本能をくすぐられるかのような不思議な感覚に、
藤也は戸惑いを覚えずにはいられなかった。

そんな中、目的のルビーと遊び、
おやつの人参スティックまでも与えることが出来て、
満足したらしい小さな台風の目は、何故か扉からは出ようとはせず、
入ってきた窓枠によじ上ると、満面な笑みを残して去って行った。
そのちっとも王女らしくないお転婆な行動は、失笑させ、
時々垣間見せた、不釣合いな大人びたような表情は、
彼女が同年代の子と遊ぶことなく育っているためではないかと、
胸を少し痛めていた藤也を和ませるものだった。


「どうやら外で待っていた侍女は、ユリアス様がヘレナ王女に就かせた者らしいですわ」
王女と入れ違いに、戻ったセシアが口を開いた。
窓から乱入してきたことから、
単身でここまで出歩い来たのかと思い込んでしまったのだが、
実は、一番信頼できるという侍女と来ていたらしいのだ。
そこでセシアが様子を伺いに外へ出ていたわけだが、その侍女曰く、
王女の身に危険が及ばない限り、何をしても一切手を出さずに自由にさせることと、
仮に、マディーナの私室へ足を向けるような機会が訪れた際は、
外を警戒するようにと、秘めた命を受けているのだそうだ。

それを聞いて、一安心してほっと息をついた藤也だったが、
真夜中になっても一向に睡魔が訪れないでいた。
羊を一匹目から数えようが、何度も寝返りを打とうが、
冴え渡った意識は、昼間会した王女を思い出させ、
そして彼女の紺碧な瞳が、ユリアスを彷彿させてしまうのだ。

(……会いたいな//)

そう思えば思うほど、藤也の身体は熱くなる。
何とかやり過ごそうとするが、どんどん上昇する熱は治まりを全く見せない。
けれど下半身に集中して孕んでしまった熱は暴れだし、
もうどうにかしなければ、とても眠れそうにはない状態になっていた。

静寂に包まれる中、もんもんとしながら寝台に横になっている藤也は、
密やかに右手をネグリジェの中へ忍ばせる。
そうして既にしっかりと勃ち上がっている自身を掌に包み込むと、
ゾクゾクするほど刺激的なユリアスの逞しい肉体を想像させながら、ゆっくりと扱く。

―――下腹部で炎のように熱く、獣のように荒い息遣いの声が艶かしく聞こえる。

わなわなと震わさせている俺の果実を忽然と口に銜えたユリアスが、
ねっとりとした熱い舌で先端の敏感な部分を舐め上げていく。
そして、溢れ出る蜜を強く啜られた瞬間、甘い快感が全身を走り抜ける。

(「ひぁぁ……っ!」)

呆気ないまでに口腔内に弾けさせてしまった蜜を、
美味しそうに飲み込んだユリアスは、
息を乱している虚ろな瞳の前で、その口許を舌先で淫らに舐め取る。
その興奮を煽る仕草を目にした瞬間、

(「…ぁ……」)

沸き起こる疼きが身体の奥から這い上がってくるような感覚に、
喘いで洩らした吐息に甘い声が入り混じる。

ユリアスは、無意識に脚を閉じようとする俺にニヤリと笑みを落とすと、
羞恥を煽るようにグイッと更に大きく両脚を開かせる。
あからさまな視線の淫靡さに刺激されて、
萎えた俺の果実に再び熱が集中し、硬く膨らんでいく。

秘奥に埋め込まれたユリアスの、香油でたっぷりと濡れた指先が、
繊細な花壁の襞を猥褻になぞりながら覚えたひどく感じる場所に触れたのと同時に、
俺の身体が勢い良く跳ね上がった。

(「ひ、っ……いやあぁ……っ」)

そこを必要に何度も強く嬲られ、その刺激に達してしまいそうになり、
甘い悲鳴を上げながら、咄嗟にユリアスの指を締めつける。
息を荒げながら上気した身体は貪欲なまでに欲し、
腰を突き出し強請るように揺らし続けている。

ぐちゅぐちゅと掻き回していた指が乱暴に引き抜かれ、
宛がわれた熱く怒張した猛々しい楔が、ゆっくりと俺の体内を侵食していく。

(「んんっ……あ、あっ、あぁっ」)

充分に解された窄まりは、逞しい牡を迎え入れていっぱいに開花し、 
とろとろに蕩けきった最奥まで挿入させたユリアスが、熱い息を吐き出した。

奥深くを熱く脈打つ硬い楔にこすられる感触が気持ち良くて堪らない。

(「ユ……はぁ、ぁ……」)

満たされ、掻き回されて湧き起こる熱い疼きが、
俺の頭の芯を蕩けさせ、無意識に腰を狂ったように揺らめかせるも、
ユリアスの突き上げのリズムが早まり、果実が極限に膨れ上がる。

そして、強烈な一突きと共に全身が泡立つように直撃する官能の波に、
狂おしいほどの欲望が思いっきり弾けた。



「はぁっ、っぁ…ぁ……っ」

荒く息を乱しながら大きく背を撓らし、
白くなるほどにシーツを握り締められていたしなやかな指先が弛緩する。

想像して手淫しただけだというのに、
まるでユリアスに抱かれた時のように身体中に甘く疲れを覚えた藤也は、
気だるい意識の中、次第に深い眠りに誘われていった。


〜To be continued〜


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Fate 49
- 2008/05/27(Tue) -
信じられない者を見たかのように大きく目を開き、
あんぐりと口を開いたまま言葉すら発することのできない藤也に、
一瞬やさしい温かみに溢れた眼差しを投げかけた彼女は、何を隠そう。
本物のハリファ王国の第一王女のマディーナである。

ジェマと呼ばれた側室を静観していたヒルダ婦人が、
パチンっと閉じた、手にしている扇子の先をマディーナに向けると横槍を入れる。

「誰ぞや?」

「僭越ながら女官長・次官を拝命致しました、名をディアナと申します」
以後お見知りおきを、とそう答えた彼女に婦人の猛追は続く。
「そのように若く、若輩な者が次官とはいえ官職などに就けるはずがないであろうに。
一体どのような手腕を振るったのであろうな? 」
ニヤリと不適に顔を歪め、慄然とする声音で唇を翻したというのに、
「ご期待に副えなくて申し訳ありませんが」
と、瞳に怒気を宿らせることなく前置きを述べたマディーナが、
その言葉は、女官長次官を任命された国王陛下を侮辱するのと同じだと、
余裕の表情を見せながら威圧的な声で告げた途端、さすがに分が悪いと悟ったのだろう。
顔色を変えた婦人は悔しそうに整えられた眉根を寄せ、唇を噛みしめる。

「失言を取り消してたもれ」
そう忌々しそうに囁き、ちらりと藤也を見遣った彼女は、
「ごきげんよう」
という言葉を残すと、
ゾロゾロと有り得ない数の侍女たちを引き連れて、そそくさとその場を離れていく。
ふぅっと息をつき、消え行くその姿を見届けたマディーナは、
静謐な笑みで俺を見つめ、元気そうでよかったわ、とほぼ二年ぶりに言葉を紡いだ。


―――ベシェという街を後にした、
幼馴染だという専属騎士の一人を連れて異国を旅していたマディーナは、
次の目的地である波止場を目前に、
ユリアスの放った部下たちに捕らえられたのだという。

そのままイラスーン王国に護送され、
ユリアスから俺の身に起こったことを一通り聞かされた語る彼女は、
ハリファ王女の名と身分を捨てて別人となり、
半ば強制的にイラスーン王国で働くよう勧められたらしい。
それは俺が偽者だと世間に知られることを危惧し、
真実を知る者たち全てを目の届く範囲に置いて監視する、
というのがユリアスの意図するところなのだということは伺い知れる。
尤もそれだけで、重要な地位に就かせるほど愚かなはずもなく、
マディーナ自身の知的で優れた才を買っているのは間違いないだろう。
けれども、そんな強引とも言えるユリアスの申し出を惜しげもなく首を縦に振り、
承諾したという彼女は、
本当の意味での自由を与えてくれたと感謝の言葉を漏らして嬉しそうに微笑むのだ。
そんな姿に、複雑な心境を抱かずにはいられない。

……なのに、だ。
自分のことは、すっかり他所に置き、
「藤也はものすごく愛されているようだけど、藤也自身も陛下を愛しているの?」

そう、真摯な眼差しで爆弾発言を平気で落としてくれるから堪らない。
恥ずかしさに顔を赤らめ、俯いてしまった俺の様子を肯定と受け留めた彼女は、
一方的でないことに安堵の息を漏らす。
「もっとゆっくり話を聞かせて貰いたいけど……」
残念そうに苦笑する彼女自身も、
就いた次官という現状は、その若さからしても容易なものではないらしい。
周知に認めさせるためにも、与えられたもの以上のことをこなし、
成果を挙げなければならない彼女は揚々とし、忙しそうに執務へと戻っていった。

―――それが、二日前の出来事である……。

そして現在、窓枠から足を踏み外して落下した、
思いも寄らない小さな侵入者に駆け寄った藤也だったが、
吸い込まれそうな深い碧色の瞳にじっと見つめられ、
しっかり、ばっちりと隠されていなければならない素顔を見られていることに、はたと気づく。

(ひぇ゛……ぇ、これは不可抗力だよね?)
心の中で、ユリアスのお仕置きを思い出した藤也がぼやく中、
「この綺麗な人は……誰じゃ?」
そう傍らに寄った侍女のセシアに問う声を耳朶に触れ、困惑する。

一方の、問うた本人も幼いながらも訝しげに、けれど目の前の始めて見る、
後頭部で丸く纏められた絹の様に艶やかな髪と、
輝石のような黒い瞳を備え持つ美しい容貌を捉えたまま、動かずにいた。

「失礼ですが、ここが御側室・マディーナの私室だとご存知でいらっしゃいますよね?」
ヴェールを被ってはいない藤也を、マディーナだとは露とも知らないヘレナ王女に、
侍女のセシアが確認を促せば、当然じゃ、と答えが返る。
どうやら彼女は、
抱くことを許して貰えなかったウサギのルビーを見に忍び込んだらしいのだった。


〜To be continued〜


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Fate 48
- 2008/05/27(Tue) -
「わらわにも、抱かしてたもれ?」

前触れなく背後から聞こえた、
その、明らかに子供だと分かる高めの声音に、藤也の心臓がドクンと高鳴る。

(―――ユ、ユリアスの……子供?!)

いずれは会うことになるだろうと覚悟はしていたものの、
不意打ちをくらった出会いに、動揺は隠せない。

けれど意外にも、感傷に浸るどころか振り返り、
その愛くるしい王女の姿を一目見た瞬間、ギュウウ……と
思いっきり抱きしめたくなる衝動に突き動かされそうになるのをなんとか耐える。
ユリアスの持つ、黄金色に輝く放射状の特殊な虹彩はしていないけれど、
この世界では珍しいとされる紺碧の大きな瞳をキラキラと輝かせている彼女は、
くるくるの巻き毛をして、まるでお人形の様に可愛いらしいのだ。

小さく、可愛いものには目がない藤也が、
裏表のない満面な笑みを浮かべながら王女の背丈に合わせて屈み、
抱いていたルビーをそっと差し出そうとするや否や、
「なりません!姫さまッ」
御つきの乳母らしき者が慌ててウサギに触れないように制止の声を上げる。

「何故じゃ?」

不服そうに顔を少し傾け、問い返す王女に、
「お下がりなさい、ヘレナ」
そう言いながら前へ歩み出た華美でゴージャスな女性は、
汚らしいものを見るような、そんな嫌そうな雰囲気を漂わせると、
バサッと綺麗な羽で作られた見事な扇子を広げ、ひらりと口元を隠しながら問う。

「その小動物は、許可が下りておるのかえ?」

もちろん許可がなければ、ねずみ一匹すら入ることは出来ないと、
重々知っていて口にしている女性が、
三番目の側室・ヒルダ婦人、その人だと悟った藤也は速やかに立ち上がる。

「マディーナにございます。お初に御目文字致します」

深く腰を下げて流儀に則った華麗な挨拶を交わしてみせたものの、
まるで品定めするかのように薄っすらと細めた目で、
必要以上に上から下まで睨め上げられては、あまりいい気はしない。
順位に一際こだわるという彼女たちが住む後宮にいる以上、
これくらいのことで目くじらを立てるつもりはないし、
いつもなら軽くスルーするしているはずなのだ。

だがこの時、珍しくもちょっとムッとしてしまい、
黒いヴェールを被っていたことを密かに感謝する藤也だったが、
胡散臭そうに上から見下ろされたまま、
「妙な病気でも移されでもしたら堪らぬ。我らに近づくでない!」
そう言い放たった、婦人を取り巻く空気が淀んだように息苦しく感じ、
歪んだように鋭さをましている視線に、何故か背筋までもがゾクッとする。

ほんの少し前、お茶会を断りに行った先の散々罵倒を浴びさせられ時でさえ、
こんな鳥肌の立つ、妙に嫌な感覚は起こらなかったというのに、だ。
うまく言い表せないが、
“あまり関わりたくない人物”と拒絶を覚えた身体が、
無駄話は避けて早く私室に入るべきだと、しきりに訴えている。
こういう時の、物事の本質を直観的に感じとる勘は、今までにハズレだ例がないのだ。
けれど、とっとと切り上げて、この場を離れようと考える藤也に、
ヒルダ婦人の取り巻きらしい側室が声を掛けた。

「その宝石は何ですの?」

藤也が大事そうに抱えているルビーを指差した彼女は、
ユリアスからのプレゼントなのかと、甲高いヒステリック気味な声音で問う。

それはハリファ王国にいた時に、
本物のマディーナ王女から頂いたものなのだが、そうとは話せるわけもなく、
「ハリファの父から頂いたものですわ」
と、仕方なしに苦笑しながら返答した藤也を蔑むように見つめ返して呟く。
「ハリファなどの小国に、そのような希少価値の高い稀な物が持てるはずがないわ」
しかも、本人ではなくペットが首に下げていることが余程気に入らないのか、
「そうそう、ハリファといえば……
確か生まれた王女を隔離して育てて、高く隣国に売り飛ばす国でしたわね」
そう卑下した言葉を吐きながらも、
気持ちはルビーの首元の極濃の大きな『ピジョンブラッド』に注がれている、
彼女がその宝石に触れようとした刹那。

「ぎゃあぁ!」

思いっきりルビーに指を噛まれた彼女は、咄嗟的に手を振り上げ、
ルビーを、いや正確にはルビーを庇う仕草を見せた藤也をはたき下ろそうとしていた。
けれど、ごつい腕に掴まれたその手は微塵にも動くことはできない。

「この汚らしい手を離しなさい!」

そう叫んだ彼女の腕を拘束しているのは、
数日前に、怪我したマリーを助けようとした時に何処からとなく現れた、
末端を示す服を着た宦官と呼ばれる下男であり、  
セシア曰く、ユリアスがラウルと呼んだという男である。  
  
―――パンパンッ!   
  
すぐに彼女の御付の者たちが、ラウルを引き離そうと動きを見せるのと同時に、  
制止を促す、手を打ち鳴らす音が鳴り響く。

「そのくらいになさいませ、ジェマ様」

―――暴れる側室の名を呼んだ、
その、忘れもしない聞き覚えのある声に、藤也は恐る恐る視線を向けた。 
 
〜To be continued〜


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Fate 47
- 2008/05/25(Sun) -
「きゃあぁ?!」

突然聞こえた、幼く、高い悲鳴に慌てて振り返った直後。

―――ドタン…ッ。

目の前で繰り広げられた光景に一瞬呆然とし、
私室のダイニングテーブルに腰掛けて寛いでいた藤也の弛緩した指先から、
ユリアスの差し入れてくれたアマンドショコラが落下する。

「うぅ、痛っ……たぁ」

落ちる寸前に顔を両腕で庇ったらしく、痛そうな表情で腕を擦っている、
窓枠から足を踏み外して落下した思いも寄らない小さな侵入者に、 
藤也は慌てて駆け寄った。

無謀にも共を連れずに現れた少女の名前は、ヘレナ。
バティスト王国出身の側室であるヒルダの生んだ、イラスーン第一王女である。 
もうすぐ、七歳を迎えるヘレナ王女との出会いは二日前に遡る。

     ◇     ◇     ◇

約束を違えたと、ユリアスにたっぷりお仕置きをされた身体は、
翌日いっぱい、ベッドから降りるのが億劫になるほど甘い気だるさが続いていた。
手鏡に映し出された首元には、 
ここぞとばかりに真っ赤な所有の証が転々の残されている。

「ちょっと、付けすぎだよ//」

もぉぅ、と頬を少し膨らまし、痕を陶然となぞりながら呟く言葉は、 
うっとりと幸せに満ちた響きで醸し出されている。
顔をわずかに赤く染め、
不平を漏らす姿を微笑ましく見つめているセシアは、心が逸らずにはいられなかった。
女性の装いをしているとはいえ、彼はれっきとした若い男性である。
刺繍などの趣味があるわけでもなく、読書が苦手だという藤也が、
一つの狭い部屋に何日も大人しくしていられないことを熟知している彼女は、 
彼のために、後宮内の全ての側室たちが行き交う時間と、 
それに使われる経路を丹念に調べる日々を送っているのだ。
そんなセシアが、接触を最低限にして安全を図らなければと痛感させられたのは、
それから更に数日が過ぎたある日のことである。

他の側室とかち合わないようにと、
セシアが自分のために、後宮内の流れを調べてくれていることを知っている藤也は、
もんもんとしながらも私室で大人しく過ごしていた。
けれどその努力は、空しくも、訪れたとある側室の侍女によって霧散させられ、
差し出された、親睦を深めるという名目のお茶会への招待状を前に、 
藤也は人知れず溜息を零した。
親睦を図るということよりも、寧ろ相手の情報を探るためのものだという“お茶会”。
どうやら、ユリアスに禁じられているはずのお茶会なるものは、 
水面下で開かれているらしい。

仮に参加したとしても、ヴェールは取ることも出来ない。
ましてや、お茶を飲まないことは、失礼に当たる……という暗黙のルールがあるとなれば、
断るしかないのだが、やっかいなことに側室の順位の下なる者は、
直接本人に断りを申し出なければならないのだ。 
 
仕方なく、セシアを連れてお招きをしてくれた側室の元へ伺った藤也は、
多くの侍女たちに取り囲まれるようにして迎い入れられた。
小さな声で囁かれているものの、けれどはっきりと届く嫌味の数々にうんざりとさせられる。
中には、ユリアスが定例としている、
“お初通い”すらされていない見捨てられた側室様だと、クスクス楽しそうに話す姿もある。
侍女たちは仕える主を称え、そして彼女達の多くは、  
主より階下な側室を嘲笑することを楽しみにしているのだと聞かされていた藤也は、
それを切実に実感させられ、心が虚空する。 
 


鼻腔を狂わさんとばかり、かなりきつい香油の香りに胸がうっと気持ち悪くなるのを抑え、
断りを終えた藤也を出迎えてくれた、 
窓掛からちょこんと顔を出したルビーがあまりにも可愛らしく、

「ああん、ルビ―――!」  

外から首の鎖を外すと抱き上げて、ヴェールの上からすりすりと頬で擦る。 
 
―――けれど、荒んだ心を一掃させてくれるルビーを抱き、感無量な面持ちの藤也は、
その傍らを偶然通り過ぎようとしていた人たちがいることに気がつかないでいた。


〜To be continued〜


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Fate 46
- 2008/05/21(Wed) -
「……っ、ぃやっ…ぁ…あぁ……っ」

戒めを解かれ、漸く吐精を許された藤也の奥処を、激しく脈動させながら、
荒々しいまでに犯し続けるユリアスの楔に肉壁を擦りあげられたら一溜まりもない。
下から上に思い切り突き上げられた藤也は、あっけなく昇り詰めてしまう。

けれど、ビクビクと僅かな白濁を吐精しながら、
その喜悦に意識が遠のくと、またユリアスの激しい律動に引き戻されるのだ。
そうしてすぐに脳も蕩けるような官能の波が押し寄せてくる。
もう何度、こうして交わったかすら分からない。

「ぁ……やっ、いや! もっ、許して……」

再び愛撫を再開するユリアスに、藤也はもう無理だと、弱々しく頭を横に振れば、
「嫌ではなかろう?……ほら」
そう言って、ユリアスはやさしく藤也の身体を揺らす。 

「っ…あ、あっ、あぁっ……」

肉壁を擦りあげる楔を、その艶かしい美体で受け止める姿はとても淫らで、
ユリアスにとっては魅惑的極まりない最上なものである。
男の肉体的欲望を沸き立たせ、追い詰めさせてやりたいと思わせしめる身体なのだ。

「本当に、やめてよいのか?」

間近で濡れたように妖しく金色に輝く瞳孔で見つめられると、何故か心は惑乱し、
甘い香りの所為だけではなく、その視線に身体の奥が熱くなっていくのだ。
幾度となく極めたはずの象徴も淫らに反応し、
いつの間にか独りでに立ち上がりを見せている。
もはや、自分の意志では身体の熱い疼きを止める事もできなかった。

「あっ、あぁ……いやっ。……して、もっと……」

そうして甘く囁き、強請るようにキスを交わす藤也の、
触れるだけで離した軽い口づけは、すぐに深く濃厚なものへと変わり、
この上なく満足したユリアスは嬉しそうに微笑む。

自分に埋め込まれている雄々しい楔をギュッと締め上げる秘奥は、
奥へ飲み込もうと貪欲に蠢き、喜悦に酔いしれたように、
藤也は快楽を追い求めようと無心に腰を妖しく揺らめかしていた。
その扇情的な光景に目を細めると両脚を抱き直し、 
快楽の弱みを猛りの先端で、そこをぐりぐりと圧迫させられた藤也は、
湧き起こる熱い疼きに楔を締めつけながら艶かしい声を上げる。

「ひぁっ、あっ…ぁ……、ああぁぁっ!」

激しく最奥を突き上げた刹那、耳朶に届く甘い嬌声と、
強烈な快感に戦慄く身体を強く抱き締めながら法悦に浸る中、
「……ユリアス様」
窓辺から家臣の一人に声を掛けられる。
「ラウルか」 
と問われた男は、はい、と短く返事をかえすと、ユリアスを促すような言葉を続ける。

「そろそろ、下々の者たちが寝床から起き出す時刻になります」

そう告げられ、短い溜息を吐き出しながら渋々頷く。
愛しい者と一緒に過ごす、限られた短な時間は瞬く間に過ぎ、
終わりを迎えるのも早く感じてしまうのは、致し方がないことなのだ。

完全にその意識を手放し、弛緩した至福な存在をやさしく抱きながら、
額から瞼、唇や首筋に……触れるような、
蕩けるように甘いキスを落としたユリアスは、淫らで熱く、
咥え込んで離さない極上の秘奥からそっと自身を引き抜くと、身体を抱え上げ、
後始末のために 湯殿に向かった。


(──俺も、甘いな。)

深い眠りへと落ちてしまっている腕の中の藤也を愛おしく見つめ、
困惑の溜息を零したユリアスは思う。

生まれ育った環境の違いというものもあるのかもしれないが、
摩れることなく前向きで、やさしい藤也の性分を殊更に愛でているものの、
この世界では、それは同時に多大な危険性を併すものなのだ。
いつ何が起こるか分からない場所でもあり、側にいることさえ儘ならないユリアスは、
隙だらけの藤也を思い心配し、守らなければと硬く決意を新たにする。
そんな彼が、特務の任に宛がわせたラウルに、尚一層の警戒をさせねばならないと、
鋭く研ぎすまされた眼差しを光らせたのは、言うまでもない。

〜To be continued〜


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Fate 45
- 2008/05/17(Sat) -
―――これ以上、俺を醜くさせるなと……と、
顰めた顔を手で覆うようにして告げるユリアスを、藤也は不思議そうに見つめていた。

「はぁっ…ぁ…あぁ……っ」

けれど官能で満たされ、
尊大なまでに膨らませた量感に支配されて甘く疼く身体を持て余す、
藤也の口からは熱い喘ぎ声しか出てこない。

“……約束を違えた……”

そのワンフレーズだけが頭の片隅で木霊し続けてはいる。
だが、甘美な悦楽に浸っている所為か、どうやら何の事を言っているのか、
ということまでは思考が追いつかないでいるらしい藤也に、ユリアスは無情にも話続ける。

「騙されるのも、約束を違えられるのも許せぬ。それがそなたなら、尚更に……」
苦しそうな表情で口を開いたユリアスは、顔を覆っていた掌をゆっくり離す。

「……一度は許そう」

襲い続ける快楽をやり過ごそうと、もどかしそうに腰を揺らめかす藤也を平然と見下ろし、
「だが二度目はない。例えそなたであってもな」
そう言い放ったユリアスだったが、
わずかに逡巡を見せるように気だるげに前髪をかき上げたまま、首を振るう。
「いや。そなただからこそ、次はどうするのか、俺自身すらわからぬ」
だからそんな自分が恐ろしいのだ、と嘆く言葉を発した後、
「二度とヴェールは取るな」
そう命を下された藤也の瞳は大きく見開かれ、激しい動揺を見せていた。

どうして知っているのか、と問うつもりで開いた藤也の口は、
「っ……あっ、いやあぁぁ」
意識なく、自身を縛りつけている紐を解こうとする手を拘束されたために、
甘い声を上げていた。

ユリアスの無表情な、
けれど良く見れば少し困ったような、戸惑っているようなそんな表情で、
「他の側室に気を許すでない」
そう発せらた声は、一段と低いものへと変わっている。
さらに声音は凄みを増し、

「マリーの元へ行くことは許さぬ」

そう告げた、
尋常でなく震え上がるほどの威圧する声に、一瞬呑まれた藤也の喉がゴクリと鳴る。
その様子から、それがユリアスの核心的に迫る部分の発言なんだと、感じ取ったものの、
「っそ、それは……聞けないよ」
どうしても引けない藤也は、首を横に揺すって答えれば、
「聞けぬ?」
まるで心の底から唸るように響く声で問い返される。
「だって、マリーとは友だちになっ……ああぁ―――!」
(友だちだと……?)
細めた剣呑な目つきを晒し、
心の中でそう呟いたユリアスは、気持ちを抑えることが出来ずに、
まったりと自身の楔を包み込んで蠕動し続ける最奥を、手加減なしに深く穿ったのだ。

「そなた、この後宮がどんな場所なのか、わかっておるであろう?」
「……かってるよ。でも、彼女は……ひゃあぁぁッ」
先端から、じんわりと滲み出す先奔りの蜜で濡れている、
縛められている昂ぶりを不意に上下に扱かれて、
堪えるように咄嗟に下腹部に力を入れながら艶やかな嬌声が零れる。

そして牡を締めつける肉襞を押し退け、ユリアスは大きく抽挿を繰り返す。
濡れて光る自身の楔が後孔の入り口から最奥まで激しく往復する姿は、
ユリアスの興奮を煽るものでしかなく、
パンッパンッと打ちつける音がする度に、藤也の身体が大きく躍る。

「……ユ、はぁぁ…ぁっ。も取って、イキ…たい……」

塞き止められたまま、奥所を嬲られ続けている藤也は限界に、すがる様な目で懇願する。
愛しい者に甘く強請られてしまえば、グラリと心が傾かないはずもない。
けれど、折れるわけには行かないユリアスは、心を鬼にして言う。
イキたかったら、誓えばいいのだ―――…と。

そう紡ぎ、腰の動きを止めたユリアスの思いとは裏腹に、
藤也はがんとして首を縦には振らず、
目に涙を浮かばせながら、やわやわと力ない抵抗を見せている。
その扇情的な姿は獣性を刺激して止まないというのにだ。
このまま、惨たらしく貪りだしそうになる衝動を、奥歯を噛みしめて必至に堪え、
心の奥底で、ユリアスがひっそりと溜息を零していることを知らない藤也は、 
ハァハァと呼吸を熱く荒立てながら、 
「俺にはね、たくさんの友だちがいたんだ……」
何処か遠くに思いを馳せるように目を細め、
「楽しい時はもちろんだけど、
寂しい時とか悲しい時とかつらい時は、いつも側にいる友だちが元気にしてくれたんだ」
と、懐かしそうに語る。 
 
「だけど、今のマリーには、乳母一人しかいないんだよ?」
「……俺とて、そのような者はおらぬ」
まるで拗ねるかのように毒舌を吐き、
他所を向くユリアスに、藤也はふっとやさしい笑みを見せる。
両腕をそっと伸ばし、自分の視界と重なり合わせるように振り向かせると、
「ユリアスには、お……俺がいるじゃない//」
顔を真っ赤にしながら、
そう真摯に告げられたユリアスは、驚きを見せたまま固まったように動かなくなった。

小さいながらも、神殿が後から増設されたのだとマリーから聞かされた時、
間違いなく彼女の“亡くなった人々のために、
一生祈り続ける”という意思を組んだからなのだと、
ユリアスのやさしさに胸がじーんと熱くなったのを覚えている藤也は、
彼のように大きなことは出来ないけれど、
たまに話し相手になるくらいはなれる、と思ったのだ。

「友だちとして、彼女の力になりたいと思ったらダメなの?」
唇にギュッと力を入れて無言を決め込むユリアスを前に、
次第に藤也は心が切なくなり出す。
「こんなことされても、ユリアスが大好きで、全然嫌いになれなくて……」
―――そして、鉄壁を装ったユリアスに白旗を振らせたのは、 
グスッと鼻を鳴らしながら、俺……信じてもらえないの?と前置きを述べた後の、 
 
「あ、愛してるのに……」 
 
そう呟いた、掻き消えてしまいそうなほど小さな、小さな藤也の愛の囁きだった。

〜To be continued〜

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Fate 44
- 2008/05/14(Wed) -
「いやあぁっ!も、取って……これっ、取って―――ッ」

我慢できない、と目に涙を溜めて訴える藤也の下半身は大きく揺れ、
時折全身を小刻みに震わせながら絶頂が近いことを訴えている。
牡を搾り取るように蠢く極上の肉壁を堪能しながらも、藤也の状態を察したユリアスは、
二つ折りにして汲み敷いている藤也の身体を一層深く折り曲げさせると、
大きく膨張した欲望の熱を開放させる為だけに、今まで以上に激しく腰を振り動かす。

困ったことに、放たれている興奮を煽る甘い香りは、
藤也の身の内を苛む、塞き止められて荒れ狂う灼熱の痛みすらも、快感へと変えさせてしまうらしい。

「うっ……あっ、あぁっ、いやあぁぁ」

悲鳴にも似た甘い叫び声を上げ、首を左右に激しく振って、必至に耐える藤也の姿を目に止めながら、
ユリアスは深く根元まで突き込んだ瞬間、抑えることなく自身の欲望を解き放っていた。
だが、到底一度では満足できずに、
両脚を高く抱え上げると、シーツから浮いた腰の秘奥をリズミカルに蹂躙する。

「や、やめ……っ。い、嫌だっ…ぁ……」

けれど漏らした声とは裏腹に、底なしに悦楽を求め続ける身体は従順に反応し、
藤也は、まるで誘うかのようにビクビクと振るえ、艶かしく腰がくねるのを止められないでいた。
(……っ、ひ…酷……)
ユリアスを睨めるものの、潤んだ瞳ではその効果も露ほどもない。

先程体内に射精された白濁が潤滑油の代わりになっているのか、滑りが増し、
ヌチュヌチュッと湿った卑猥な音が部屋に響く。
ユリアスは獣のように激しく腰を振って抽送を繰り返し、藤也の最奥へ届かんばかりに貫き続けていた。

「はあっ……っあ、ゃぁ…ぁ……っ」

猛々しい牡をぎゅっと断続的に締めつける柔肉は、息を荒くしたユリアスを徐々に絶頂へと導いていく。
藤也は、自分の最奥を嬲る楔が一瞬ビクンと痙攣したのが分かったその瞬間、
弾けたように熱い液体が迸り、極めたことを知る。
その後も、余すことなく全ての欲望を藤也の奥処に注ぎ込もうと、
小刻みに腰を振っているユリアスを視線に捕らえながら、
(―――ユ、ユリアス、何で……っ?)
片隅に残る意識の中で、藤也は呆然としたように呟いていた。
ユリアスが怒っているらしいことは、その表情や醸し出している雰囲気で掴んでいた。
けれど、こんな風にされるのは納得がいかないし、我慢もできない。

一方で、昼も夜も藤也に自分の精を注ぎ続け、
出来ることなら、他所に目が行かないように底なしの快楽に身を溺れさせてやりたい……と、
邪なことすら考えているユリアスの顔に両腕を伸ばして、掌にその温もりを感じながら口を開いた。

「こんなユリアスは、……好きじゃない」

途端に見下ろしている紺碧な双眼が細まり、視線に冷たさと鋭さが増す。
おそらく、臣下の者ならば、投げられた刺すような視線に怯みを見せているだろう。
だが、快楽に蠢く奥処と戦う藤也は恐れなど感じる暇もなく、必至にユリアス見つめていた。

「何を、そんなに怒っているの?」
藤也は紡いだ。
言葉に表さないと何も伝わらない、だからちゃんと話して……と。

問われた当の本人も、酷いことをしているのは十分過ぎるほど分かってはいる。
けれど初めて芽生えた、嫉妬に狂った荒々しい感情を抑えることなど出来ずにいたユリアスは、
頬を温かな両手で包み込まれ、やさしく愛しい声音で真摯に囁かれたことにより、漸く収まりを見せ始めた。

右手で頬に触れる藤也の甲を引き離すと、許しを請うかのように、
その細い指先にチュッと軽い音を立たせて口づけを見せ、
「気づけば、一日中、側にいないそなたのことばかり考えている……」
そう思いを語るユリアスは、
「そなたが約束を違えたことに、我慢ならなかったのだ」
と慟哭するような声を漏らした。

―――どうしてこんなにもイライラするのかと、独白するような言葉は続き、 
これ以上、俺を醜くさせるなと、ユリアスは囁く。

〜To be continued〜

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Fate 43
- 2008/05/13(Tue) -
自分の上にいるのが誰なのか、やっと気づいた藤也だったが、
見下ろしているユリアスの、怒っているような形相に戸惑いを見せずにはいられなかった。

(ユ……ユリアス、どうして―――?)

けれど放たれた、官能を誘う独特なユリアスの甘い香に包まれてしまっている藤也の意識は、
快楽を追い求めることで満たされ始め、次第に官能の渦に飲み込まれていく。  
 
 
ユリアスは、足を大きく開かさて露わになった後孔を、 
丹念にそのしわを揉みほぐすかのように、ざらついた舌で舐めあげる。 
すると、瞬く間に甘美な性的刺激が走り、腰を上下に弾ませながら、藤也の下半身に熱が集中していく。

「あっ、ああぁ……っ」

恥ずかしいほどに感じて、身を震わせながら喘いでしまい、慌てて唇にぎゅっと力を入れる。
(だっ、だめ……。そ、外に声が……)
漏れてしまう、と心配して廊下に控えいるはずのセシアが頭に浮かんでしまう藤也は、
いくら侍女だとは言え、淫らな声を聞かせたくはないのだ。

「そんなに、ここを舐められるのが好きか?」
「ち、違っ……」

首を振って否定するものの、 
卑下するような言葉を吐く、ユリアスの舌使いはねっとりと巧みで、
外に漏れて恥ずかしいという気持ちなど忘れさせられた藤也の腰がくねりだす。
そんな乱れた姿を薄く笑ったユリアスは、濡れた柔軟な舌先を秘奥にググッと差し入れる。 

「あ、あうっ……」  

襞をやさしくなぞられ、生暖かい感触を受けながら与えられる快感の波を、
藤也は両手で頭上のシーツをギュッと掴み、髪を振り乱しながら荒い呼吸で耐えようとする。

「声を聞かせろ」
もっと鳴いてみろ、と言われたからではないが、執拗なまでに秘奥を激しく掻き乱された藤也は、 
我慢できずに身体を捩りながら、濡れそぼった嬌声を上げてしまう。   
 
「やっ…はぁっ……あ、あぁっ……」
 
既に喜びに疼く奥処は蠢き、たっぷりと濡れて蕩ける藤也の後孔は、
ヌチュッという音と共に舌先の隙間を沿うようしてに侵入してくる、
ユリアスの人差し指を難なく受け入れてしまう。

すぐに舌は抜かれたものの、
秘奥の弱い極みを指腹で辿られ、目も眩む深い快感の波に呑み込まれた瞬間、 

「ひゃっ……あぁぁっ!」

嬲る指をきゅっと締めつけながら、一度許してしまった喘ぐ声は止めることができそうにもない。  
ユリアスは捏ね回す指を三本に増やし、天に向いてそそり立つ自身を香油で濡らして馴染ませると、
「俺がどんなに溺れているのか、わからせてやろう」
そう言い放つと、蕩けきった奥処から指を抜き取ると猛る楔を宛がい、
ガクガクと震える細い腰を支えながらゆっくりと突き入れる。

「ひぁッ、あ……あっ、あっ……」
(は、入って来る。ユリアスが、奥まで―――…)

立派な怒張をすべて呑み込まさせられた藤也の後孔は、一杯に開花している。
ユリアスは、尊大なまでに膨らませた硬い楔を先端まで引き抜き、
次いで力強く最奥まで一気に貫くと、性急なまでに激しい律動を開始しする。

「ひああぁぁ―――っ!」

艶かしい声と同時に背筋を大きく撓らせ、
体内で暴れている熱い楔の責めから無意識に逃れようとする細い腰を引き寄せると、
その秘奥を何度も何度も深々と抉り続ける。

そうしてまったりと絡みつく甘美な肉体を味わいながら、 
ユリアスは、指を伸ばして藤也の昂ぶりの様子を窺うことも忘れない。
かわいそうなことに、触れずに直立し、快感に細かく震える藤也の雁首の下は、
引き裂かれたネグリジェの切れ端で、ぐるぐると縛められている。
藤也が応じるまでは、男としてイカせるつもりはないと、 
意図を持ったユリアスが、射精できないように彼の自由を奪ったのだ。

〜To be continued〜
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Fate 42
- 2008/05/09(Fri) -
―――草木も眠る深更。

藤也の私室のドアが静かに開く。


物音を立てぬように中へ入ったユリアスは、上から纏っていた黒い覆いをパサリと脱ぎ捨てた。
そして、寝台の上で安らかな寝息を立てて眠る、藤也の傍らへ行き、薄明かりの中、そっと寝顔を覗き込む。

特務を帯びて、後宮へ潜り込ませていたラウルから連絡が入ったのは、通常の執務をこなした後、秘密裏に動かしている者たちと共に私生活の場である正居殿へ戻った時だった。
あれほど、後宮内では大人しくしていろと言ったのに、他の側室に声をかけた上に、あろうことか、戻るように口ぞえをしたラウルを無視し、私室まで上がり込んだと報告を聞かされた時は、腹立ちを覚えた。
そして、絶対にヴェールを取るなという約束を無にして容姿を見せたことに、ぶち切れそうになった。
この俺以外に、心を許すことなど有ってはならぬのだ、絶対に。

「どうしてくれようぞ」

熱り立った感情は抑えきれず、噛みしめた唇の端からは、血が滲み出していた。
けれど、すぐにでも飛んで行き、その煮えたぎる思いを存分なまでに分からしめさせてやりたい衝動を、後宮内を刺激し、藤也の身を危険に晒すことになるという実情が、なんとか踏み留まらせたのだ。
そうして燻り続ける感情を身の内に置きながら、深夜まで待った俺は用心を重ね、今まで纏ったことのない黒い布で身を包み、後宮へと続く細い廊下を渡った。


当然のように心穏やかに眠り続ける姿に、再びカッとなって頭に血が昇っていくのを覚えた俺は、激情のまま、身体に掛けられた毛織物を剥がす。
そして間おかず、寝床に横たわっている藤也の上に荒々しく馬乗りに跨ると、両手で掴んだ上品なネグリジェを一気に左右に引き裂いた。

―――ビリリッ…という聞きなれない音と違和感に、藤也の意識が朧げに浮上し始めるものの、その身に何が起こっているのか、までは認識出来ずにぼんやりとした目で、俺を視界の隅に捉えている。
簡単にヴェールを取れぬようにと、消えない痕をたくさん浮かび上がらせるために、藤也の首筋をきつく吸い上げた瞬間、ビクッと反応した彼は、咄嗟にしなやかな身体を硬直させた。

「やっ、嫌―――…ッ!」

大声を上げて叫びながら悶え、手といい足といい、動かせる部分という部分は全て動かして必死に抗いを見せ始める。

「やだ、やだッ。離せってば―――!」

細かに震わせている、折れてしまいそうな華奢な身体。
どんなに声を荒げようと、甘いとしか思えない、拒絶する声音。
そしてその弱々しい抵抗は、ユリアスの中に芽生えた加虐心を刺激させ、煽って止まない。
声も、顔も、身体も、それが藤也である以上、誰にも譲るつもりはないし、触らせたくもないという、強い独占欲は、いっそこのまま攫って、正殿の小さな隠し部屋に閉じ込めてしまおうかと思うくらいだ。
もちろん、そんなことができるなら、端からこんな後宮になど入れているわけはない。
獰猛な雄の顔を呈したユリアスは、ギラつかせる肉食獣のような目を細めると、襲い掛かった。

「んん……ぅ」

藤也の両腕を頭上で一塊に押さえつけ、素早く歯列を割って侵入させた舌を、荒々しく突き動かし、藤也の舌先を捉えると執拗に吸い上げ、絡め取り、我を忘れたように、可憐な唇を貪り続ける。
だが、薄明かりの中で恐怖心で一色に染まり上がっている藤也は、相手が誰かということすら、考えている余裕はなく、逃れようと蹂躙する舌先に噛みつく。
そして自由になった口で、

「助けて、セシア―――ッ!!」

無意識に侍女の名を呼んで助けを求めた藤也に、
(こやつ……)
この俺がわからぬのか、と逆鱗したユリアスの、ギリリっという歯軋りの音が零れる。


藤也の進退きわまるような悲痛な叫び声に、灯火を手にして慌てて駆け寄れば、バタバタと手向かいを見せる藤也の上に乗り上げているその姿は、見覚えのあるものだっただけに、セシアは愕然とする。

「ユリアス様、これは一体……」

驚きに、思わずそう口を開いて問い掛ければ、
「明かりを置いて下がるがよい」
冷たく言葉を吐き捨てる声音は、いつになく恐ろしく鼓膜を振るえさせる。
「ですが、藤也様が……」
嫌がっておられますとひるまず言葉を続けようとしたセシアは、
「下がれと申しておるのだ!」
聞こえぬのか、と怒りを露にしたユリアスに逆らいを見せることは出来なかった。
ただ偏に、藤也につらい思いをさせないで頂きたいと願いながら、
「……仰せの通りに」
そう呟くように儀礼を述べた彼女は、後ろ髪を引かれる思いを胸に秘めたまま、ぱたりと小さな音を立てて、扉を閉めた。

〜To be continued〜

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Fate 41
- 2008/05/08(Thu) -
「ネネ。お茶が零れていてよ?」

ヴェールを取った藤也を呆然と見つめたまま、乳母はお茶を注いでいる手を止めてしまっていたらしい。
マリーの声にハッと我に返った乳母は、慌てて始末にかかる。
そう言った彼女も、藤也に視線を向けた途端、目を見開かずにはいられなかった。

「ねぇ、セシア。顔に何かついてる?」

自分を見た二人が二人とも変な顔をしたことに、不安になった藤也は、顔を確認しながらセシアに訊ねれば、彼女はいつもと同じ穏やかな笑顔で、いいえ、と首を横に振っている。
そんな藤也に、平静を取り戻したマリーが、ごめんなさい、と謝りの言葉を述べた。

「お顔に大きな傷痕があるとお聞きしていましたものですから……」

どうやら事前に、その顔を隠すために黒いヴェールで身を包んでいるという御触れがあったらしい。
あはは、と心の隅で小さく笑った藤也は、見たこともない艶やかな黒い髪と瞳を持ち、その上、予想もしなかった美しい容貌に、マリーたちが放心したように心を奪われていたことを知らないでいた。


グラスを手にして口にすれば、冷たいハーブティーが喉を滑り落ちていく。
(あぁ、美味し―――い)
はぁ〜生き返った、とほっと一息つく横で、ずっと目を光らせたまま、成り行きを見つめていた男が、顎に掌を宛がい、困ったように、いや呆れたかのように嘆息を漏らしている。
そんなことには気づかない藤也は、一通り、確認するかのようにぐるりとマリーの私室を見渡す。 
ユリアスの話では、どの側室も煌びやかに誂えられているとのことだったが、どう見ても、彼女の私室は煌びやかから程遠いことに疑問が生じる。  
そして彼女の纏っているドレスも、取り立てて飾りのない質素なものなのだ。
華美に満ちた生活がいいとは思わないけれど、彼女が意図的に、あえてそうして慎ましくしているように思えてならない。
それに、いくら最下位の側室とはいえ、飾りなく暮らすほど給付される資金は少なくはないはずだと、お節介なことに、藤也は口を開く。

「この閉鎖された後宮では、部屋を飾ったり、綺麗なドレスを着たりする以外に、楽しむようなことはあまりないように思えるんだけど……」

そう前置きを述べ、再びマリーを視界の中心に捕らえながら、どうして、ここまで控え目な生活をしているのか、と直截に訊ねれば、ふっと笑みを見せ、ご存知ですか?と俺に問い返す。  
初めて後宮入りを果たした側室の元には、ユリアスは必ず挨拶に赴くというのだ。 
どうも彼女は、その時のことを気にかけてくれている様子で、 
「裾までヴェールで隠れていらっしゃるのだから、マディーナ様は、普段からもっと艶やかなものをお召しになられればよろしいのに」   
美しく映える姿は、私室に訪れたユリアスの目にも留まるはずだと小っ恥ずかしいことをさらりと言う。 
「わ、私のことはどうでもいいんです//」  
(……だって、男だし) 
心の中で、頬を少し染めながら独白している藤也に、マリーがひっそりと打ち明ける。 
 
「五年前の聖誕祭でお会いした時から、ユリアス様をお慕い申し上げております」
それは、ドキリとする告白だった。
「ですが……愚かにも野望に満ちたわたくしの父は、ユリアス様のお父様の命を奪ってしまっただけではなく、多くの民の命を失わせてしまいました」
そう話す彼女はユリアスへの思いは捨て、今はただ亡くなった人々の冥福を祈り、大切な人を失わせてしまった家族たちへの幸福を願い、日々、後宮内に設けられている小さな神殿に足を通わせるためだけに存在しているのだと言う。
だから、華美な生活をする必要がない、と平然に言う彼女に心を痛めずにはいられない。

確かにユリアスのお父さんを亡き者にしようと企み、実行させたのは、彼女の父親かもしれない。
「でもそれは、貴方の責任ではないのでしょ?」
けれど、首をはっきりと左右に振りながら、
「わたくしには、父を止められなかった責任があります」
そう語った彼女は、一国の王女らしく凛としている。

「本来ならば、世俗を離れて戒を受けるべきなのですが……」

唯一王家の血を持つ生き残りであるマリーは、祖国復活を望む者が現れる可能性を唱えるユリアスに、“死”か“後宮入り”かという二社選択を迫られたらしい。
死を選んでいれば、楽になれたのかもしれないと呟くように話す彼女は、生きて神に祈りを捧げ、贖罪する道を選んだのだ。

真っ直ぐで、穢れ無き思慮深い彼女に感銘した藤也は、席を立っていた。
そうして彼女の元に歩み寄ると、腕を伸ばし、
「一人くらい、見方する人間がいても迷惑じゃないよね?」
お友達になろうと、握手を求める。
「もちろん、ここでは新参者で何の力にもなれないけど……」
そう苦笑する藤也に、クスリと短い笑い声を漏らした彼女には、後宮入りしてからという三年間、乳母以外の人は誰も側にいなかったのだ。

本当に手を取ってもいいのかと戸惑いを見せる彼女は、ほら早く、と腕先を揺するようにして待つ藤也を見つめ返した瞬間、胸の奥がジーンと熱くなり、その、自分に差し伸べられた温かい存在に縋るような気持ちで腕を伸ばしていた。

〜To be continued〜

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Fate 40
- 2008/05/07(Wed) -
―――人知れず、藤也は自我と格闘していた。

花壇の近くで、突き飛ばされて動けなくなったマリーを見かけ、ついつい好奇心に駆られて私室へ着いてきてしまったけれど、実は、カラカラになった喉が潤いを求めていたのだ。

そんな時にタイミング良くテーブルに置かれたのは、一杯の冷たいハーブティー。
マリー王女の侍女、もといマリー王女の乳母が入れてくれた飲み物を前に、コクリと小さく喉がなる。

(……すっごく飲みたいけど、やっぱ飲んだらダメだよな?)

そう思うもの、人前でヴェールを取るなと口を酸っぱくして言われているのだ。
けれど、私室に戻るまで持ちそうにない藤也は、
(うぅ、飲みた―――い!)
こっそりとグラスを手にすると、ヴェールの中へ運ぶことにした。
顔を出さずに飲めばいいのだ、という甘い悪魔の囁きに白旗を振ったのだ。

「マディーナ様、何をなさっておられるのですか!」

想像以上のセシアの怒声に、ビクリと肩が揺れてしまう。
(あ、危な……ッ)
もうちょっとで、危うくドレスを汚すところだった俺は、ほっとして安心した息をつく。

「やっぱり、お行儀が悪かった?」 
……よね?と、駄目押しで首をわずかに傾げながら、セシアに苦笑いを見せる。
もちろん、セシアはそんなことで藤也を制したのではないのだが。

子供のようなことをなさらないで下さい、とばかりにお小言を言われると観念した藤也の横で、クスクスと笑い声が響く。

「ご、ごめんなさい……」

笑いを堪える涙が浮かんでいる目を拭いながら、ストゥールから立ち上がったマリーは、こちらへと痛む足を動かしながら歩み寄ってくる。
そうして、俺から取り上げるようにグラスを手に取った彼女は、
「ご心配なさらなくても、毒など入っておりませんわ」
セシアに向かって悠然と微笑むと、グラスを一気に呷る。

“毒”という言葉に、行儀の悪いことを止められたのではなかったのだと、勘違いをしていた俺は、少し血の気が引きそうになった。

一瞬、頭の中に過ぎってしまったのは、ユリアスのお父さんを“暗殺した国の王女”という、歪んだ認識。
先入観に基づき、一方的に彼女にレッテルを貼っていたのかと、藤也は愕然とする思いを振り払うかのように、激しく頭を振るう。

後宮入りしたばかりで、彼女との接点はない。
助けようと近づきはしたが、命を奪うほどの恨みや妬みなど、持たれるわけもないのだ。
なにより、こんなに澄んで綺麗な瞳を持つ人が悪いことを考えているとは、どうしても思えなかった。
それはただの直感だから、証拠なんかないし、確証もない。
でも、確信めいてそう思えた藤也は、乳母に向かって口を開く。

「もう一杯、用意して頂けますか?」

そう言った藤也は一呼吸置くと、姿を覆うヴェールに手を掛けた。


〜To be continued〜

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Fate 39
- 2008/05/06(Tue) -
「マリー様の私室でよろしいですね?」

あえて、名前の部分を強調して口にした太い声の持ち主は、
「お運び致します」
と答えを待たずして颯爽と言い放ち、難なく俺の腕の中から彼女を掬い上げていく。
 
「マディーナ様も、ご自分の私室へお戻りください」  
 
そう諭すような言葉を向けてくるが、その圧するような強い眼差しは、とても末端を示す服を着た下男には思えなかった。
しかも、彼女を抱え上げて運ぶ体格は、ユリアスのように堂々たるもので、鍛えられているように見受けられるのだ。  
そんな人物を目にした藤也が、訝しげに思うのも頷けるというものだろう。 
 
けれど、疑問を生じさせながらも辞さずに男の後を追う藤也は、自分の前を歩む男が、
(……やれやれ、困った方だ)
などと、期待通りにならずに落胆した、けれどどこか楽しげに心の中でぼやいているのを知らない。
 
 
一方のセシアは、注意を促すように足を速めさせてそそと藤也に歩み寄っていた。 
 
「戻られた方がよろしいのでは?」   
 
こっそりと俺の耳元で、不安気な様子を露にさせてそう囁いた彼女は、“マリー”と呼ばれた側室が、今は亡きユリアスの父王の命を奪った国の王女であることに気づいたからなのだろう。 
 
藤也自身もその名を耳にした時は、ドクンと心臓が痛いほど跳ね上がり、全身に緊張を走らせていたのだから、セシアが警戒するのは当然なのかもしれない。
だが、既に落ち着きを取り戻している藤也は、今も身を引き締めさせているものの、ひるみは見せず、心配いらないよ、と安心させるかのように、にっこりと少し余裕めいた艶やかな笑みさえ浮かべているのだ。
それでも心配が拭えないのは、それだけ大切な存在であるからなのだろう。
そんな気丈に振舞う姿をハラハラとした気持ちで見つめているセシアの心情を、知ってか知らずか、藤也は無情にも口を開いていた。
 
「ねね。何で男の人がいるの?」
 
マリー王女のことは、既に頭の隅に追いやっていた俺は、ユリアス以外は入れないはずの後宮に、男がいることに疑問を懐かずにはいられなかったのだ。
セシアは、そのことに関しては別段気にする様子は見せてはいないようだけど、
(……絶対、ただ者じゃない!)
という雰囲気がひしひしと伝わってきているのだから仕方ない。
 
「宦官の一人なんですよ、きっと」
「……宦官?」
 
初めて聞く耳慣れない言葉に、俺は頭を傾けながら聞き返していた。
それは、宮廷や後宮に使えるために去勢を施された男の側仕えを意味するのだという。
後宮制度はもちろん、宦官は一人もいない国の王女に仕えるセシアは、イラスーンへ来る途中に、後宮内のことを一通り教示させられていたのだ。
この国のしきたりや風習に、どうこう言うつもりはないが、初めて目の当たりにした存在に胸が痛む。
―――が。
 
(本当に、この人は去勢しているんだろうか?) 
一瞬だったとはいえ、去勢された人間があんなに強く人を圧するような眼差しをするものだろうか……。 
そう疑い問いながら進ませていた足がぴたりと止まる。
   
 
 
側室順位の最下位な、彼女に宛がわれている部屋は狭いだけではなかった。
日当たりが悪い所為か、少しじめじめとしたような雰囲気を醸し出している私室の入り口に造られた花壇には、芽吹くものすらない。
けれど、おそらく後宮の華やかな姫君たちにとっては、嫌厭せざる終えないだろうその空間は、華美ではなく、落ち着きのある家具で整えられているのだ。 
 
外のムッとする暑さから解放され、少し火照る肌がひんやりとする心地よい澄んだ空気に包まれた瞬間、その胸に大きく息を吸い込ませ、堪能しようとしていた藤也は、
「こちらにお掛け下さいませ」
老婆によって引かれた椅子に腰を下ろした。 
 
そして暢気にも、
(いいなーこの部屋。すっげー涼しいし……)
場所換えてくれないかな?などと、言ってもどうにもならないことを真剣に心の中で嘆く藤也の前で、シンプルなストゥールへ側室を下ろした男は、近くに置かれているローストゥールを手に取ると、そっと彼女の足を乗せ、手馴れた手つきで怪我の手当てを処置していく。 
 
その手際の良さに、藤也の眼差しがわずかに細められていた

〜To be continued〜

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Fate 38
- 2008/05/05(Mon) -
「う―――ん…」

上等な窓掛の裾を掴み、その隙間からチラチラと外の様子を覗き見ている藤也は、珍しく難しい顔をしていた。
その手には、後宮の正室たちの資料を書き留めたものが握られている。
何度も食い入るように読み返した頭の中には、十二名のデーターがばっちりと入っているのだが、 資料からすると、そこに新しくつけ加えられるだろう自分は、 下から三番目辺りになるらしい。
しかも、皆さん……年上な方ばかりなのだ。

「ねぇ、セシア。やっぱり、挨拶しに行くべきかな?」

(ご近所づき合いは大切なんだから〜)
と、語っていた母の言葉が、何故か頭の中で木霊している藤也の、 眉根を寄せ、そわそわしながら、 そう問いかける表情は不安気で頼りないものだった。
何しろ、こういう手のことは全く経験がなく、どうしたらいいのか、さっぱりわからないから困るのだ。
そんな様子を、微笑ましく見つめていたセシアは、
「お気持ちはわかりますが、ムスタファ様も必要ないと仰っていたのですから……」
やんわりと問い掛けに答えながら、藤也のためにカモミール・ティーを入れようと腰を上げている。 

彼女たちは、自分より劣っている立場にある存在には、然程興味を示さないというのだ。
だから、あえて自分からアピールして刺激を与えるべきではない、と言うことらしい。
藤也自身も、わざわざ荒立てるようなことをする気は更々ないものの、閉じこもっていると余計なことを考えてしまいそうになるのだ。
窓掛をバサッという音を立てて、自分の身を包み込んだ彼は、戸惑いを一掃させようと、思い切って外へ出てみることにした。

頭部からすっぽり掛けられた黒いヴェールは、より姿を見せ難くするように二重に重ねられたものである。
その分、視界も甚だしく悪い。
それでも、部屋に閉じこもってうだうだと考えてしまうより、断然気分は良かった。

美しく咲き乱れる花壇に設けられた東屋の前で、侍女を大勢引き連れた婦人が慌しそうに通り抜けていく。
見事なまでにスルーされ、さっきまで挨拶をしに行くかどうかで頭を悩ませていた彷彿した自分の姿に、苦笑いを零していた。

「邪魔よ、お退きなさい!」

その耳障りな威圧するような声に視線を向ければ、どこぞの姫君が、崩れるようにして地面に座り込んでいた。
どうやら、先ほど素通りして行った婦人に突き飛ばされたらしい。
「まぁ、なんて酷いことを……」
無意識にセシアの口から、悲痛な声音が漏れていた。

傍らに侍女らしい老婆を従えている彼女は、余程の痛みらしいのか、動けずにうずくまっている。
その様子を目に留めた瞬間、藤也は躊躇いを見せずに走り寄っていた。

「大丈夫ですか?」
と、苦悶の声を漏らしている姿に問いかければ、
「……ええ、大丈夫です」
けれど、そう答える彼女の表情は苦痛に満ちていて、つぶらな瞳には溢れ出しそうな涙を浮かべている。
そんな彼女のドレスの裾に触れ、そっと捲り上げてみれば、花壇の淵に激しくぶつけてしまったらしく、脛の辺りが惨いまでに腫れ上がり、切れた傷口からは、痛々しそうに血が滲み出していた。
弁慶の泣き所と言われる向こう脛は、骨の上を覆う肉が薄いために、少しぶつけただけでもかなり痛い場所なのだ。

(うあ、メチャメチャ痛そうじゃん!)

「早く手当てをしなきゃ」
そう言って手を貸そうとする藤也に、彼女は首を横に振りながら口を開く。
「わたくしに関わりになられると、貴方様まで面倒に巻き込まれてしまいます……」

放たれた言葉に、嘆かわしい色を浮かべる表情を露にした藤也は、大きく深い溜息を吐き出し、自室に運ぼうと彼女の身体を抱え上げようとした時だった。

―――藤也の行動は、大きな影に阻まれる。

〜To be continued〜

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Fate 37
- 2008/05/05(Mon) -
―――後宮の側室たちは、どの姫も憂いを含んだ一級品の美しさを兼ね揃えている。
けれど、世継をつくるために足を通わせていたとはいうものの、 ユリアスはどの美姫にも心を許すことはなかった。

その中には、ユリアスによって滅ぼされた国の生き残りである王女も含まれている。
ラキウラ銅山へ視察に訪れた父王が暗殺されたのは、今から三年前に遡る。
単に、その報復攻撃として、圧倒的な戦力を持って完膚なきまでに叩いたまでだが、どんな理由があるにしろ、多くの民の血を流し、家族を殺した相手を恨み、憎みこそすれど、良く思うわけはないだろう。
そしてそれ以外の側室たちも皆一様にして政略的な意図を孕み、望まずして後宮に迎え入れられている以上、心を解くわけにはいかなかったのだ。
それゆえ、ユリアスは情事の際も常に枕の側には剣を置き、そうして、どれほど身体が疲れていても後宮で夜を明かすこともしなかった。

そんな彼女たちの住む後宮は羽振りよく整えられ、華やぎを見せている。 
けれど、子を産むことのなかった側室や、王の寵愛を受けられなかった側室は、王の死去と共に、いずれその身柄は、「嘆きの里」と呼ばれる寂れた土地にある離宮に移されることになるのだ。
それは後宮のように華やかな生活ではなく、毎年定められて給付された金銭で、細々と静かに余生を送る運命にあった。
そのため、自分の行く末を案じる彼女たちの多くは、王の寵愛を受けようと肝胆を砕く日々を送っている。
ただでさえ、今は元老院が躍起になって正妃選びをしている最中である。

そんな状態の後宮内に、通例通りに藤也を入れなければならないユリアスは、自分を不甲斐なく思うのと同時に、嫋やかな彼の身を心配せずにはいられなかったのだ。

「すぐに会いに行く」

だが、そう言ったユリアスの視線に映った藤也の眼差しは、今までの彼とは別人のように輝いていた。
揺らぎを垣間見せず、凛としてたたずむ姿に魅せられたかのように惹きつけられたユリアスは、 それ以上の言葉を紡ぐことが出来なかった。
何が彼の心を気高く変えたのかはわからない。
けれど、わずかにではあるが、そんな前向きな状態に変化させている藤也をユリアスは頼もしく思えていた。
今の彼なら大丈夫だ、と確信めいた思いを胸に秘めながら、後宮へと消えていく藤也の後ろ姿を見届け、その細い通路から視線を戻したユリアスの表情は、以前の様に威厳を放ち、何人も犯しがたい雰囲気を醸し出していた。

「サヴェイラとロサリナに放っていた密偵からの報告は、どうなっている?」

数日とはいえ、ろくに眠る暇もない日々を過ごしているユリアスは、疲れを見せることもなく身を翻すと、秘密裏に動かしていた者たちに声を掛けながら、慌しくその場を辞した。

       ◇         ◇         ◇      

一方、女官長に案内された後宮内の私室に足を踏み入れた藤也は……。

「う、はぁ……っ」

思わず驚きの声を上げていた。
ムスタファに、目立たぬように通例通り小国出身として迎い入れ、定められた狭い私室を宛がうと言われていたからだ。
確かに、狭い。
今まで住んでいたハリファの内殿に比べたら、破格なまでに狭いのだが、藤也のために誂えられた部屋は、目を見張るばかりの調度品で上品に整えられていたのだ。

壁に掛けられている、巨匠の筆による、神話の一節を描いた見事な絵画をはじめ、天使や薔薇の彫刻で飾られた猫足の飾りダンスに化粧台……。
金糸や銀糸をふんだんに使った豪華なクッションが置かれたストゥールなどが配置されている。
そして上等な布で織り上げられた窓掛が二重に掛けられ、微かな風に靡いている大きな窓は、日差しに耐性のない藤也の肌を配慮したような造りである。

……考えたいことは、色々あった。

けれど、一昼夜神経を張りつめ続け、そのまま後宮入りした藤也は、ふかふかとしたベッドの上に乗り上がり、ごろんと横になった途端、深い眠りに誘われていた。

〜To be continued〜

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Fate 36
- 2008/05/04(Sun) -
兵士や騎士や官僚などの邸宅や殿舎などが連なって形成されている地区を抜けると、城門の入り口が現れた。
馬を降りた俺はユリアスに連れられ、その先へと歩む。

公卿や近衛騎士団の宿舎である白堊殿を抜けると、見事な中庭が広がっていた。
中央には宮殿まで続く長い池が造られており、その水面に映る美しい宮殿の姿が、時折、風で揺らめいている。
王宮というものに見慣れているはずの俺は、その土木技術と規模の大きさに圧倒されていた。

宮殿からは放射状に通路が走り、それぞれ、国王の私生活の場である正居殿、王妃やその子供らの住むために用意されている居殿、皇族の居殿と、白堊殿に繋がっていると言う。
そして……正居殿内の奥には後宮の入り口へと続く通路が併設されている。

衛兵に警備された壮麗な扉が開かれ、通路の中央に敷かれた豪奢な赤い絨毯の上を、衣擦れの音を微かに立てながら進む。
すると、随所にある繊細で、精巧で素晴らしいな装飾された壁面の通路の先に、数人の人だかりが出来ていた。

(―――強くありなさい……)

鈴を転がすような声が、ふと俺の頭の中に広がった。
それは、カナールの離宮で甘い紅茶を嗜みながら、ユリアスの母であるユリアナが俺に語った言葉だ。
「迷いは隙を生みます。それは貴方を、延いては陛下の命取りに繋がるかもしれません」
神妙に話しかけられた俺の心臓は、鷲掴みにされたようにグサッときた。
一瞬、目の前が真っ暗になったほどに……。
だから、と前置きを述べた彼女の言葉は続いた。
「陛下と共に歩むことに迷いがあるのなら、今すぐ、ここからお逃げなさい。 時間稼ぎをするぐらいの時間は作ってあげられるわ」
まるで俺を試すようなことをうすく笑いながら 、けれどその視線は、真っ直ぐに向けられていた。
唇の端をキュッと噛みしめながら、首を横に大きく振って答えた俺に、
「ならばこの先、どんなことが起ころうと、決して陛下の手を離してはいけません」
あの時、そう俺に諭した言葉が心の中に浸潤する。
(―――強くありなさい……)
そう思いがけずに過ぎったユリアナの声は、俺を強く引っ張ろうとしてくれるようだった。

「……藤也?」

不安げな声音で名を呼ばれた俺は、一度強く瞼を閉じ、そして深く息を吸った。
けれど再び開かれたその瞳には、もう迷いの陰りはなかった。
心配そうに俺を見つめているユリアスに、微笑を浮かべて応える。

「お待ち申し上げておりました」

自分から一歩前へ進み出た俺に、数名の近習小姓を率いる年配の女官長が平伏して、出迎えの言葉を述べた。
「マディーナ様にお仕えできることを光栄に存じております。何なりとお申しつけ下さい」
その柔らかな声は、大らかでやさしそうな雰囲気を醸し出している。
「……ありがとう……。どうか、顔を上げてください」
鼻の奥をツンとさせた俺は、彼女の視線の高さに合わせるように腰を落とすと、
「不束者ですが、よろしくお願いします」
はにかむような苦笑を零しながら手を差し出した。

自分に向かって差し伸べられた手に、思わず目を見張った女官長だったが、すっとその手を取って額に掲げ敬う。
そして藤也の微笑みは、ただ声もなく、その成り行きを見守っていた他の近習たちをも一瞬の内に魅了し、心酔させてしまったようだった。

ファティマの手にする黒いヴェールを掴み取ったムスタファは、無造作に俺の顔を覆い隠すと、
「マディーナ殿の容姿のことは、一切漏らすことを禁ずる。よいな?」
人を圧するような厳めしい声を発した。

いつになく取り乱したように、がばっと後ろから強く抱きしめたユリアスの、
「すぐに会いに行く」
そう囁いた言葉を耳に留めた俺は、未知なる世界へ続く、細い通路へ足を踏み入れていった。

〜To be continued〜

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Fate 35
- 2008/05/04(Sun) -
―――藍青色だった空が、うっすらと明るくなりかけている中、全身が真っ白な速歩馬に揺られながら、俺は眼前に高く聳える外壁を見上げた。

(……ここが、王都ラトゥシュ……?)

心の中で呟きながら、周囲を見渡す。
大きな門を潜り抜けた先の、多くの商店がひしめき合ったように建ち並ぶラトゥシュの大通りは、まだ人々が眠りについているため、ひっそりと静まり返っている。
後、数時間もすれば、食べ物屋の店先や、値段の交渉をしている店先などでも、大きな笑い声が溢れて活気に満ちるだろう。
想像した賑わいを見せる街中の様子に、ここがユリアスの統治する世界なんだと、俺は思わず眼を細めた。

疾走する、ユリアスと藤也を乗せた艶やかな白馬が、さすがに大国と謳われ、軍事力を頼みにしているだけあって、攻め落とすのは容易でないことが窺える、二重の高い城壁に設置された門を潜り抜けていく。

王城は、堅牢な外壁に守られた王都北部の山の頂に建ち、その有する敷地は途轍もなく広大なものである。
その敷地内の至るところには池や噴水などが造られ、水を実に巧みに取り込んでいることから、「水に浮かぶ王城」とも呼ばれているという。
険しいシャラフ山脈から分岐している、シグルド山脈から引かれた水は途絶えることはなく、王城内の庭園を豊かにしているのである。

次第に、舗装された緩やかな道の先に宮殿と その四隅に聳える尖塔の上辺部分が城壁から覗いて見えてきた。
美しいまでのその景観を、身を乗り出して見入っていた俺。
馬が突然跳ねた瞬間、大きく身体のバランスを崩した体躯をがっしりと力強い腕が支える。

「無茶をするな。落ちたらどうする」

心配してそう告げた声は、けれど、落とさないのは当然だという揺るぎのないものだった。
「……ありがとう」
もう少しで落馬するところだったと思った俺は、安堵して脱力した身体をユリアスの広い胸に凭れ掛かけた。
けれど、やさしく抱きしめられているというのに、漠然とした不安な面持ちに包まれていく。
気分を逸らそうとして、頭の中を過ぎった疑問に、俺は開きかけた口を閉ざした。
躊躇ったのは、やっぱり聞くべきことじゃないと思ったからだ。

「どうした?気分が優れぬのか……?」

勘違いし、途端に眉根を寄せて顔を覗き込まれた俺は、首をゆるく振った。
それでも納得がいかないのか、馬の足を止めてしまったユリアスに、問い正されるかのように見つめられる。
頭部を覆い隠しているコバルトブルーの布から見下ろす、深く濃い蒼色の双眼……。
俺は数センチしか離れていない距離から、 放射状に黄金のダイヤモンドリングが輝く、その印象的な虹彩を魅入りながら、開口していた。

「ムスタファが宰相で、ユリアスが王なのは……」
―――どうしてなのかと。
だって、王位って第一王子が跡を継ぐものだと思っていたから。
けれどユリアスは、なんだそんなことかと、つまらなそうに呟くと声に出した。

「ムスタファのヤツが、面倒なのは御免だと、継承権を放棄したのだ」

少し呆れたように話すものの、実はムスタファの母君が、隣国から正妃にと迎えられたユリアナの侍女だったという背景が関与しているらしい。
そして驚くことに、離宮でユリアナの傍らに控え、俺にお茶を入れてくれた女性が、ムスタファの母君だったのだ。
王の寵愛を一心に受けた彼女は、後宮入りしていたという。
姉妹のように本当に仲がよかった、主従関係にあるはずの彼女たちの関係は、ムスタファを身ごもった後も揺るがず、ユリアナは後宮へ足を運び続けていたらしい。
そして、ユリアナの懐妊の後はさらに絆が深まったのだと……。
本当にそんな関係が成り立つものかと、かなりの疑問を覚えずにはいられないけど、でも実際に俺の前にいた、睦まじく話していた二人の様子を見れば、納得しないわけにはいかなぁと思う。
そうして国王が亡くなり、ユリアスが王位に就くと、 ユリアナは後宮からムスタファの母君を連れ出し、今の離宮で隠居生活同然の日々を二人で送っているのだ、ユリアスは語った。

多分それは、彼女たちの持って生まれた性分なんだろう。
今の俺は自分のことで精一杯で、他所に心を広げられるほど余裕はないけれど、だけど少しずつでもいいから、ユリアスの傍にいても恥じないような、そんな大人になりたいって思う……。

〜To be continued〜

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