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Fate 20
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- 2008/04/09(Wed) -
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太陽の日差しがいくぶん和らぐ頃、砂上に揺らめく陽炎の中に、突然岩山が浮き上がる。
「藤也、見るがいいバルディア山中にある神殿を」 (……えっ) 「こ、此処……なの?」 「ああ」 誇らしげに悠然と微笑むその視線の先には、巨大な岩山以外には何も見当たらない。 (本当にこんな場所の、何処に神殿があるんだ……?) 不思議そうにしている俺に、ユリアスは低く笑うと視線を元に戻した。 その岩山の一角に狭い裂け目が見え始める頃、ファティマに声を掛けられた一人の兵士が馬を疾走させ、その姿を消した。 両側には高さが優に五十メートルはあろうかと思われる岩の壁。 その岩壁の道は薄暗く、馬が並んで二頭しか歩けないほど狭い道幅である。 周囲を険しい岩山で囲まれている為に、外からはその存在が分からないような造りになっているらしい。 どのくらい進んだのだろうか……。 細い道の先に突如として開けた空間を、イラスーン王国の一個師団が警備に当たっていた。 侵入者を一網打尽にできる地形である。 恐らく、この場所の彼らを打ち破って侵入できる者はいないだろう。 先程の兵士は、一行の到着を知らせる為に使わせられたのだと、藤也悟った。 その広場を駆け抜けると、再び狭く曲がった道が続く。 そして長い上り坂を進んでいくと、いきなり正面に神殿が現れた。 岩山を刳り貫いた太陽の神殿の入り口は、繊細で美しい彫刻が施されていて、あまりの素晴らしさを目にした俺は、感嘆の声を出すのさえ忘れていた。 ここまでずっと馬に乗せられて来た俺は、そっと降ろされた場所で目前にどーんとそびえる神殿を前に、呆然と口を開けて立ち尽くしてしまった。 不意にユリアスに横抱きに抱き上げられる。 「ちょっ、何?」 「腰がつらいであろう?」 「だ、大丈夫だから。自分で歩けるし……」 ふんっ、と鼻を鳴らしただけで下ろす気は全然ないらしい。 確かにちょっとつらかった。 何しろ、この十八年というもの、馬などに乗ったことのなかった俺は、連日連夜の移動でお尻っぺたに負担がかかっていたのだ。 馬から下りても馬に乗ってる感じが消えないし、馬には悪いけど、 (もう当分、馬はいいかな……) と思わずにはいられなくなっている俺を抱えたまま、ユリアスは足早に神殿へ向かう。 「お待ち申し上げておりました。陛下、藤也様」 腰を深く折り、出迎えた神官らに神殿の奥へと誘われ、見事なまでに磨かれた円柱が並ぶ通路を進む。 その先は分岐しているという控えの間で、そっとユリアスに抱き下ろされた。 本来は、清めの洗礼を受ける為に、ここからは別々の聖地に進むらしい。 だがこれ以上、王城を長く空けるわけにはいかないユリアスは、一昼夜掛けて盛大に執り行う儀式を大幅に略し、明日の朝までには神殿を離れるつもりらしい。 話を聞きながら、差し出された冷たい飲み物を一気に飲み干した俺は、そこで漠然とした疑問を投げかけた。 「……で、その儀式って何の儀式なの?」 俺の言葉に周りに控えていた人たちが一瞬動きを止め、その場がシーンと静まり返った。 (あ、あれ?俺、何かマズイこと聞いちゃった?) こんなことならここへ来る前にちゃんと聞いておけばよかった、と後悔し始めた俺に、 「此処で、そなたと婚姻の儀を執り行う」 アラヤ神の前で誓いと証を立てるのだと、当然のように答えた。 (ふーん。なぁんだ、婚姻の儀式ね……) どこか他人事のように心の中で呟いた俺だったが、馴染みのないかけ離れた言葉にハッとして、 「え、えぇ―――っ!こ、婚姻?!」 思わず仰天して叫んでいた。 (今、婚姻って言ったよね?婚姻って、結婚するっていう……アレだよね??) ユリアスは、黙ったままじっと俺を見つめている。 (そんなの初めて聞いたよ?) いや、確かにイラスーンの国王が王女を気に入って同盟を結んで、んでもって条約には王女が後宮入りするって話をファティマさんから聞いてたけどさ。 (ま、マジで……結婚しちゃうの?) ってか、そんな大事なこと、準備もなしで簡単にしちゃっていいの? なんていうか、結納とか……そういうのいろいろあるでしょ? よくわかんないけど、大事だしね? ―――と、俺は現実逃避を図りながら頭を左右に振り、胸の中で叫んでいた。 「……藤也」 ふと呼びかけられて、塞ぎこんでいた面を上げた。 端整な顔が、俺のすぐ傍にある。 「逆らうことは許さぬ」 王者として犯し難い威厳を放つユリアス。 命令されるのは好きじゃない。 好きじゃないのに……、その高圧的な物言いに、屈辱感や嫌悪感よりも、甘い酩酊感で満たされてしまうのは何故だろう。 けれど、最近気づいたことがある。 どんな冷たい言葉を吐こうが、冷たい視線を投げようが、ユリアスは俺を大切なもののように扱うということに。 今も、「逆らうことは許さぬ」と言いながら、俺の掌を握りこみ、まるで恋人にするかのように自分の口元へ持っていくと、その手の甲に口付けをするんだ。 〜To be continued〜 |
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