Fate 21
- 2008/04/10(Thu) -
粗方の説明を聞かされた俺は、ユリアスと分かれて冷たい大理石の廊下を進む。

女官に案内されて着いた清めの間には、霊水を溜めた浴場があり、その四隅の高台には神々の仮面をつけた巫女たちが立っていた。
彼女たちの掲げる勺から水が零れ落ち、水面を揺らしている。
その、不思議な空間に魅入られている俺の周りに、数人の女官が集まったと思いきや、伸ばされた腕たちによって一気に服を脱がされる。

(―――ひぇ゛……ぇ)

掌で、慌てて自分の息子を覆い隠す。
いくらピチピチの若い女の子たちじゃないからって、いや若いかもしれないけど……。
と、とにかくだ。
平凡な高校生やってた俺が、女の人たちに裸を見られて、平気でいられるわけがないだろ?
(恥ずかしんだってば―――///)
トマトのように真っ赤になって血が上り、若いかどうかと言うところまで気が回らないんだ藤也は、心の中で叫んでいた。
だが彼女たちは仕事柄なのか、股間だけ隠している間抜けな格好を見ていても、何一つ顔色を変えていない。

それでもどうになこうにか、身が引き締まるかのように冷々としている霊水に浸かる。
そして身を清めた俺は、女官たちによって雫を丁寧に拭われるという恥ずかしい思いを再び体感させながら、婚礼衣装を着つけられていた。
イラスーンの宮廷衣装を基本に誂えられたドレスは、ハリファと同じような細いシルエットのドレスなのだが、その隅々まで細かい細工が施されている。
その婚礼衣装を纏った俺が厳粛な雰囲気に包まれる頃、数人の神官たちが出迎えに扉を叩いた。

純白の豪奢な外衣はずっしりと重く、俺は静々と前へ進む。

「どうぞこちらへ」
と言われて開かれた両開きの重厚の扉の先には、凛々しく端整な出たちのユリアスが悠然と構えていた。
王族を表すという鮮やかなコバルトブルーの長衣と、床を這う長さの外衣の縁には金糸の刺繍が贅沢なまでに装飾されている。
イラスーン王家の正装でもある腰の帯剣には長剣の他に儀式の時に使うと言う半月刀が添えられていた。

「……藤也」 

いつになくやさしい声音に歩み寄ると、腰を抱かれ、さらわれるように祭壇の前へ連れて行かれる。
ファティマも含め、かなりの神殿関係者が見つめる中、厳かな雰囲気と緊張感とで、俺の心臓が早鐘を打つように鼓動する。
ギュッとドレスを掴んでいる腕に力を入れて耐え忍ぼうとした時、俺の張り詰めた状態を察したのか、俺に顔を向けたユリアスがふっと、柔らかに微笑んだんだ。
「……ッ!」
それも今まで見たことのない、満面の笑みで。
途端に俺の全身が脈動し、さっきとは違った意味で、胸が勝手にドキドキと心音を刻み出す。
(し、心臓が壊れるぅ―――…)
パッと顔を逸らし、心の中で慌てふためく俺は、もう儀式のことなんか頭からすっ飛んでいた。

そんな俺が正気に戻った時は、情けないことに、
『……ここに聖なる婚儀は成立した。我がイラスーンに栄えあれ』
と祭司が高らかに宣言し、儀式が終わるところだった。
祝福を受けながら、十二の神々に扮した神官たちが均等に立ち並ぶ間の通路をゆっくりと進んでいく。

それでも幾分緊張が続いていたらしい俺の、固くなっていた身体から力が抜けていく。
「ユ、ユリアス。俺……ちゃんと出来てた?」
どうしても拭えない不安から、俺を気遣いながら進む存在に投げかけてみた。
「ああ、そつのない出来だったぞ」
そう言われて、ふぅと安堵の息を漏らしていた俺は、ユリアスの目が輝いていることに気がつかなかった。
「疲れたであろう?」
と問いかけたユリアスは、返事を待たずに俺を軽々と抱き上げると、女官に先導されながらスタスタと歩く。
出口の方ではなく、横に反れた細い通路へと。
「ちょっ……何処へ行くの?」
もう儀式は全部終わったよね、と投げかけた時、甘い香りが俺の鼻腔をくすぐった。
(…………!!)
見覚えのあるその香りに、俺の身体がビクンと反応する。

〜To be continued〜

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