Fate 33
- 2008/04/24(Thu) -
(―――へ…?)

何のことだかさっぱりな俺は、目をキョトンさせながら首を傾げ、間抜けな声で呟いていた。

おもむろに頭をガシガシと掻きながら、
「どう考えても、この異様なまでに甘ったるい雰囲気を作り出してるのが、俺の知ってるヤツだとは思えないんだよな」
そう言ったムスタファは、ユリアスの斜め後ろに控えているファティマに視線を投げた。
「なぁ、お前もそう思うだろ?」
問われたファティマも、幾分困ったような表情を見せ、苦笑を漏らしいる。
そして乱れた前髪をおおざっぱに掻き上げたムスタファは、俺の顔を覗き込むように見つめながら続ける。

「大体、君を大事そうに抱えているその男は、目で人を射殺せるって言うくらい冷たい視線を放って、 
常に人を寄せつけない雰囲気を醸し出していたし。隙も見せず、与えず、全てのことを無感情な冷めた目で見てたんぞ?」
一度もまともに笑ったとこなんて見たことないしなぁ、と少し呆れたように言う。
もちろん、その男と言うのは、指を指されているユリアスのことだ。

冷たい視線とか、常に人を寄せつけない雰囲気とかは、なんとなくわかる……うんうん。
精悍な面で鋭く目を細めたように見つめられたことがあったけど、あれはちょっとビビッたし、今だって時々、王者として犯し難い威厳を放って、俺に有無を言わせない表情をする。

「それがどうだ?その、冷徹で無表情な男がたった一人の人間を相手に、高揚したり焦燥したりして、一虚一盈してるかと思えば、今は蕩けそうな甘い目をして抱きしめてるし……」

(えぇ―――ッ?!ユリアスが、一虚一盈……?)

意表に出たその吐かれた台詞に、ちょっと気抜けする。
確かに、俺を大切なもののように扱っているということは、ひしひしと感じるようになったよ?
(自分で言ってて、かなり恥ずかしいけど……//)
と、とにかく穏やかな表情を見せてやさしく笑ったり、壊れ物を扱うかのように、そっと接してくれたりもするし、 
恐怖に慄けば、不安が消え去るまでずっと背中を擦って抱き締めててくれる。
ユリアスの力強い腕に引き寄せられ、大きくて温かい胸の中にいると、俺はとても安心して……そして、とっても幸せな気持ちになるんだ。
だから、その手を離したくなくなる。……ううん、違うな。もう離せないんだ、きっと。
それだけ俺の中でユリアスは大きな存在になってしまっているから。
だけど、堂々としているユリアスの感情が不安定に変化しているようには、全然見受けられない……。

「まぁ、アレだ。誰かの為に、自ら進んで動くようなヤツじゃなかったのは確かなんだ」

ムスタファの語る話は、俺の中でイメージされている姿からは遠く感じるもので、不思議に思った俺が視線を向ければ、ユリアスは何故かそっぽを向いていた。
面白くなさそうな声音で、
「ムスタファめ、余計なことを……」
一人呟くように囁いたユリアスは、そう言いながらも、その口元は緩んでいる。

そしてじっと見つめる視線に気づいたユリアスは、俺の顔を見て一瞬驚き、すぐに眉根を寄せると少し困ったような、そしてわずかにはにかむような顔で目を細めると、うっすらと微笑んだ。
前にも見せたことのあるそれは、わかり難いけれど、間違いなく、いつになく動揺して、ちょっと照れている表情なのだ。
その笑顔を見て、俺の胸はトクンと跳ね上がる。

「このまま一生、冷徹で無表情を突き通すのかと心配してた身としては、ちょっと感動しているんだよ」

ムスタファの口は止まらず、さらに爆弾発言が落ちる。

「……信じられないくらい愛されてるんだな」

一気に俺の顔が、ボッと音を立てて火を噴いたように赤らみ、心臓はバクバクと高鳴り、初めて他人から言われたその言葉に、俺はかつてないほどうろたえていた。
それまで、何だかんだで辱める言葉を言うムスタファを容認していたユリアスだったが、俺の様子を見兼ねたように、ふぅっと息を吐くと、口を開く。

「ムスタファ、そのくらいにしておけ」

ニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべて、俺達の様子を伺っていたムスタファは、少し慌てたようにコホンと一つ咳払いをして、すぐさま佇まいを改める。
そして、まるで心配するような事はないんだと安心させるような口調で言葉を紡ぐ。

「そんな大切に思っている存在を、片時も離したくないと思っているヤツが、単身で後宮へ放り込むわけないだろ?」

そう言って、ムスタファは指をパチンと鳴らした。

〜To be continued〜

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