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Fate 35
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- 2008/05/04(Sun) -
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―――藍青色だった空が、うっすらと明るくなりかけている中、全身が真っ白な速歩馬に揺られながら、俺は眼前に高く聳える外壁を見上げた。
(……ここが、王都ラトゥシュ……?) 心の中で呟きながら、周囲を見渡す。 大きな門を潜り抜けた先の、多くの商店がひしめき合ったように建ち並ぶラトゥシュの大通りは、まだ人々が眠りについているため、ひっそりと静まり返っている。 後、数時間もすれば、食べ物屋の店先や、値段の交渉をしている店先などでも、大きな笑い声が溢れて活気に満ちるだろう。 想像した賑わいを見せる街中の様子に、ここがユリアスの統治する世界なんだと、俺は思わず眼を細めた。 疾走する、ユリアスと藤也を乗せた艶やかな白馬が、さすがに大国と謳われ、軍事力を頼みにしているだけあって、攻め落とすのは容易でないことが窺える、二重の高い城壁に設置された門を潜り抜けていく。 王城は、堅牢な外壁に守られた王都北部の山の頂に建ち、その有する敷地は途轍もなく広大なものである。 その敷地内の至るところには池や噴水などが造られ、水を実に巧みに取り込んでいることから、「水に浮かぶ王城」とも呼ばれているという。 険しいシャラフ山脈から分岐している、シグルド山脈から引かれた水は途絶えることはなく、王城内の庭園を豊かにしているのである。 次第に、舗装された緩やかな道の先に宮殿と その四隅に聳える尖塔の上辺部分が城壁から覗いて見えてきた。 美しいまでのその景観を、身を乗り出して見入っていた俺。 馬が突然跳ねた瞬間、大きく身体のバランスを崩した体躯をがっしりと力強い腕が支える。 「無茶をするな。落ちたらどうする」 心配してそう告げた声は、けれど、落とさないのは当然だという揺るぎのないものだった。 「……ありがとう」 もう少しで落馬するところだったと思った俺は、安堵して脱力した身体をユリアスの広い胸に凭れ掛かけた。 けれど、やさしく抱きしめられているというのに、漠然とした不安な面持ちに包まれていく。 気分を逸らそうとして、頭の中を過ぎった疑問に、俺は開きかけた口を閉ざした。 躊躇ったのは、やっぱり聞くべきことじゃないと思ったからだ。 「どうした?気分が優れぬのか……?」 勘違いし、途端に眉根を寄せて顔を覗き込まれた俺は、首をゆるく振った。 それでも納得がいかないのか、馬の足を止めてしまったユリアスに、問い正されるかのように見つめられる。 頭部を覆い隠しているコバルトブルーの布から見下ろす、深く濃い蒼色の双眼……。 俺は数センチしか離れていない距離から、 放射状に黄金のダイヤモンドリングが輝く、その印象的な虹彩を魅入りながら、開口していた。 「ムスタファが宰相で、ユリアスが王なのは……」 ―――どうしてなのかと。 だって、王位って第一王子が跡を継ぐものだと思っていたから。 けれどユリアスは、なんだそんなことかと、つまらなそうに呟くと声に出した。 「ムスタファのヤツが、面倒なのは御免だと、継承権を放棄したのだ」 少し呆れたように話すものの、実はムスタファの母君が、隣国から正妃にと迎えられたユリアナの侍女だったという背景が関与しているらしい。 そして驚くことに、離宮でユリアナの傍らに控え、俺にお茶を入れてくれた女性が、ムスタファの母君だったのだ。 王の寵愛を一心に受けた彼女は、後宮入りしていたという。 姉妹のように本当に仲がよかった、主従関係にあるはずの彼女たちの関係は、ムスタファを身ごもった後も揺るがず、ユリアナは後宮へ足を運び続けていたらしい。 そして、ユリアナの懐妊の後はさらに絆が深まったのだと……。 本当にそんな関係が成り立つものかと、かなりの疑問を覚えずにはいられないけど、でも実際に俺の前にいた、睦まじく話していた二人の様子を見れば、納得しないわけにはいかなぁと思う。 そうして国王が亡くなり、ユリアスが王位に就くと、 ユリアナは後宮からムスタファの母君を連れ出し、今の離宮で隠居生活同然の日々を二人で送っているのだ、ユリアスは語った。 多分それは、彼女たちの持って生まれた性分なんだろう。 今の俺は自分のことで精一杯で、他所に心を広げられるほど余裕はないけれど、だけど少しずつでもいいから、ユリアスの傍にいても恥じないような、そんな大人になりたいって思う……。 〜To be continued〜 |
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