Fate 45
- 2008/05/17(Sat) -
―――これ以上、俺を醜くさせるなと……と、
顰めた顔を手で覆うようにして告げるユリアスを、藤也は不思議そうに見つめていた。

「はぁっ…ぁ…あぁ……っ」

けれど官能で満たされ、
尊大なまでに膨らませた量感に支配されて甘く疼く身体を持て余す、
藤也の口からは熱い喘ぎ声しか出てこない。

“……約束を違えた……”

そのワンフレーズだけが頭の片隅で木霊し続けてはいる。
だが、甘美な悦楽に浸っている所為か、どうやら何の事を言っているのか、
ということまでは思考が追いつかないでいるらしい藤也に、ユリアスは無情にも話続ける。

「騙されるのも、約束を違えられるのも許せぬ。それがそなたなら、尚更に……」
苦しそうな表情で口を開いたユリアスは、顔を覆っていた掌をゆっくり離す。

「……一度は許そう」

襲い続ける快楽をやり過ごそうと、もどかしそうに腰を揺らめかす藤也を平然と見下ろし、
「だが二度目はない。例えそなたであってもな」
そう言い放ったユリアスだったが、
わずかに逡巡を見せるように気だるげに前髪をかき上げたまま、首を振るう。
「いや。そなただからこそ、次はどうするのか、俺自身すらわからぬ」
だからそんな自分が恐ろしいのだ、と嘆く言葉を発した後、
「二度とヴェールは取るな」
そう命を下された藤也の瞳は大きく見開かれ、激しい動揺を見せていた。

どうして知っているのか、と問うつもりで開いた藤也の口は、
「っ……あっ、いやあぁぁ」
意識なく、自身を縛りつけている紐を解こうとする手を拘束されたために、
甘い声を上げていた。

ユリアスの無表情な、
けれど良く見れば少し困ったような、戸惑っているようなそんな表情で、
「他の側室に気を許すでない」
そう発せらた声は、一段と低いものへと変わっている。
さらに声音は凄みを増し、

「マリーの元へ行くことは許さぬ」

そう告げた、
尋常でなく震え上がるほどの威圧する声に、一瞬呑まれた藤也の喉がゴクリと鳴る。
その様子から、それがユリアスの核心的に迫る部分の発言なんだと、感じ取ったものの、
「っそ、それは……聞けないよ」
どうしても引けない藤也は、首を横に揺すって答えれば、
「聞けぬ?」
まるで心の底から唸るように響く声で問い返される。
「だって、マリーとは友だちになっ……ああぁ―――!」
(友だちだと……?)
細めた剣呑な目つきを晒し、
心の中でそう呟いたユリアスは、気持ちを抑えることが出来ずに、
まったりと自身の楔を包み込んで蠕動し続ける最奥を、手加減なしに深く穿ったのだ。

「そなた、この後宮がどんな場所なのか、わかっておるであろう?」
「……かってるよ。でも、彼女は……ひゃあぁぁッ」
先端から、じんわりと滲み出す先奔りの蜜で濡れている、
縛められている昂ぶりを不意に上下に扱かれて、
堪えるように咄嗟に下腹部に力を入れながら艶やかな嬌声が零れる。

そして牡を締めつける肉襞を押し退け、ユリアスは大きく抽挿を繰り返す。
濡れて光る自身の楔が後孔の入り口から最奥まで激しく往復する姿は、
ユリアスの興奮を煽るものでしかなく、
パンッパンッと打ちつける音がする度に、藤也の身体が大きく躍る。

「……ユ、はぁぁ…ぁっ。も取って、イキ…たい……」

塞き止められたまま、奥所を嬲られ続けている藤也は限界に、すがる様な目で懇願する。
愛しい者に甘く強請られてしまえば、グラリと心が傾かないはずもない。
けれど、折れるわけには行かないユリアスは、心を鬼にして言う。
イキたかったら、誓えばいいのだ―――…と。

そう紡ぎ、腰の動きを止めたユリアスの思いとは裏腹に、
藤也はがんとして首を縦には振らず、
目に涙を浮かばせながら、やわやわと力ない抵抗を見せている。
その扇情的な姿は獣性を刺激して止まないというのにだ。
このまま、惨たらしく貪りだしそうになる衝動を、奥歯を噛みしめて必至に堪え、
心の奥底で、ユリアスがひっそりと溜息を零していることを知らない藤也は、 
ハァハァと呼吸を熱く荒立てながら、 
「俺にはね、たくさんの友だちがいたんだ……」
何処か遠くに思いを馳せるように目を細め、
「楽しい時はもちろんだけど、
寂しい時とか悲しい時とかつらい時は、いつも側にいる友だちが元気にしてくれたんだ」
と、懐かしそうに語る。 
 
「だけど、今のマリーには、乳母一人しかいないんだよ?」
「……俺とて、そのような者はおらぬ」
まるで拗ねるかのように毒舌を吐き、
他所を向くユリアスに、藤也はふっとやさしい笑みを見せる。
両腕をそっと伸ばし、自分の視界と重なり合わせるように振り向かせると、
「ユリアスには、お……俺がいるじゃない//」
顔を真っ赤にしながら、
そう真摯に告げられたユリアスは、驚きを見せたまま固まったように動かなくなった。

小さいながらも、神殿が後から増設されたのだとマリーから聞かされた時、
間違いなく彼女の“亡くなった人々のために、
一生祈り続ける”という意思を組んだからなのだと、
ユリアスのやさしさに胸がじーんと熱くなったのを覚えている藤也は、
彼のように大きなことは出来ないけれど、
たまに話し相手になるくらいはなれる、と思ったのだ。

「友だちとして、彼女の力になりたいと思ったらダメなの?」
唇にギュッと力を入れて無言を決め込むユリアスを前に、
次第に藤也は心が切なくなり出す。
「こんなことされても、ユリアスが大好きで、全然嫌いになれなくて……」
―――そして、鉄壁を装ったユリアスに白旗を振らせたのは、 
グスッと鼻を鳴らしながら、俺……信じてもらえないの?と前置きを述べた後の、 
 
「あ、愛してるのに……」 
 
そう呟いた、掻き消えてしまいそうなほど小さな、小さな藤也の愛の囁きだった。

〜To be continued〜

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