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Fate 48
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- 2008/05/27(Tue) -
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「わらわにも、抱かしてたもれ?」
前触れなく背後から聞こえた、 その、明らかに子供だと分かる高めの声音に、藤也の心臓がドクンと高鳴る。 (―――ユ、ユリアスの……子供?!) いずれは会うことになるだろうと覚悟はしていたものの、 不意打ちをくらった出会いに、動揺は隠せない。 けれど意外にも、感傷に浸るどころか振り返り、 その愛くるしい王女の姿を一目見た瞬間、ギュウウ……と 思いっきり抱きしめたくなる衝動に突き動かされそうになるのをなんとか耐える。 ユリアスの持つ、黄金色に輝く放射状の特殊な虹彩はしていないけれど、 この世界では珍しいとされる紺碧の大きな瞳をキラキラと輝かせている彼女は、 くるくるの巻き毛をして、まるでお人形の様に可愛いらしいのだ。 小さく、可愛いものには目がない藤也が、 裏表のない満面な笑みを浮かべながら王女の背丈に合わせて屈み、 抱いていたルビーをそっと差し出そうとするや否や、 「なりません!姫さまッ」 御つきの乳母らしき者が慌ててウサギに触れないように制止の声を上げる。 「何故じゃ?」 不服そうに顔を少し傾け、問い返す王女に、 「お下がりなさい、ヘレナ」 そう言いながら前へ歩み出た華美でゴージャスな女性は、 汚らしいものを見るような、そんな嫌そうな雰囲気を漂わせると、 バサッと綺麗な羽で作られた見事な扇子を広げ、ひらりと口元を隠しながら問う。 「その小動物は、許可が下りておるのかえ?」 もちろん許可がなければ、ねずみ一匹すら入ることは出来ないと、 重々知っていて口にしている女性が、 三番目の側室・ヒルダ婦人、その人だと悟った藤也は速やかに立ち上がる。 「マディーナにございます。お初に御目文字致します」 深く腰を下げて流儀に則った華麗な挨拶を交わしてみせたものの、 まるで品定めするかのように薄っすらと細めた目で、 必要以上に上から下まで睨め上げられては、あまりいい気はしない。 順位に一際こだわるという彼女たちが住む後宮にいる以上、 これくらいのことで目くじらを立てるつもりはないし、 いつもなら軽くスルーするしているはずなのだ。 だがこの時、珍しくもちょっとムッとしてしまい、 黒いヴェールを被っていたことを密かに感謝する藤也だったが、 胡散臭そうに上から見下ろされたまま、 「妙な病気でも移されでもしたら堪らぬ。我らに近づくでない!」 そう言い放たった、婦人を取り巻く空気が淀んだように息苦しく感じ、 歪んだように鋭さをましている視線に、何故か背筋までもがゾクッとする。 ほんの少し前、お茶会を断りに行った先の散々罵倒を浴びさせられ時でさえ、 こんな鳥肌の立つ、妙に嫌な感覚は起こらなかったというのに、だ。 うまく言い表せないが、 “あまり関わりたくない人物”と拒絶を覚えた身体が、 無駄話は避けて早く私室に入るべきだと、しきりに訴えている。 こういう時の、物事の本質を直観的に感じとる勘は、今までにハズレだ例がないのだ。 けれど、とっとと切り上げて、この場を離れようと考える藤也に、 ヒルダ婦人の取り巻きらしい側室が声を掛けた。 「その宝石は何ですの?」 藤也が大事そうに抱えているルビーを指差した彼女は、 ユリアスからのプレゼントなのかと、甲高いヒステリック気味な声音で問う。 それはハリファ王国にいた時に、 本物のマディーナ王女から頂いたものなのだが、そうとは話せるわけもなく、 「ハリファの父から頂いたものですわ」 と、仕方なしに苦笑しながら返答した藤也を蔑むように見つめ返して呟く。 「ハリファなどの小国に、そのような希少価値の高い稀な物が持てるはずがないわ」 しかも、本人ではなくペットが首に下げていることが余程気に入らないのか、 「そうそう、ハリファといえば…… 確か生まれた王女を隔離して育てて、高く隣国に売り飛ばす国でしたわね」 そう卑下した言葉を吐きながらも、 気持ちはルビーの首元の極濃の大きな『ピジョンブラッド』に注がれている、 彼女がその宝石に触れようとした刹那。 「ぎゃあぁ!」 思いっきりルビーに指を噛まれた彼女は、咄嗟的に手を振り上げ、 ルビーを、いや正確にはルビーを庇う仕草を見せた藤也をはたき下ろそうとしていた。 けれど、ごつい腕に掴まれたその手は微塵にも動くことはできない。 「この汚らしい手を離しなさい!」 そう叫んだ彼女の腕を拘束しているのは、 数日前に、怪我したマリーを助けようとした時に何処からとなく現れた、 末端を示す服を着た宦官と呼ばれる下男であり、 セシア曰く、ユリアスがラウルと呼んだという男である。 ―――パンパンッ! すぐに彼女の御付の者たちが、ラウルを引き離そうと動きを見せるのと同時に、 制止を促す、手を打ち鳴らす音が鳴り響く。 「そのくらいになさいませ、ジェマ様」 ―――暴れる側室の名を呼んだ、 その、忘れもしない聞き覚えのある声に、藤也は恐る恐る視線を向けた。 〜To be continued〜 |
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