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Fate 57
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- 2008/06/16(Mon) -
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命を狙われたのが自分だったと知った時は、
愕然と……いや、そんな簡単な言葉では言い表せないくらいの 大きなショックを受けたのは、忘れはしない。 大切な人を危険な目に遭わされれば、誰だって憤慨するのは当たり前だ。 だからユリアスがこんなにまでも激しく怒り、 躊躇いも見せずに犯人を殺そうとまでしてるのは、俺の為なんだとは思う。 と、坦々と言うと、まるで他人事の様に聞こえるかもしれないが、 俺だって、ユリアスの命が狙われでもしたら間違いなくキレるだろう。 そんな風に思う俺の考えを、綺麗ごとだ、って人は思うかも知れない。 だけど二十世紀生まれの俺としては、 どんな理由があろうと、やっぱり殺人はモラルに反することだと思うし、 正当化はもちろん、容認するわけにも行かないのだ。 ましてや自分の愛している人に殺人などさせたくはない。 ……そう考えを寄せる藤也は、 掴んだユリアスの腕を必至になって抑えようとしていた。 その気にさえなれば、藤也の制止を振り切ることなど、 強靭な肉体と鍛えられた逞しい体格のユリアスにしてみれば、造作もないことなのだ。 だが、一向にそうしようとはしない様子を目に、 ディアナに藤也を連れてくるように命じたことが間違いではなかったと 痛感するムスタファがホッとしたように肩から力を抜くと重たい口を開き、 ユリアスに声を掛けた。 「恐れながら、陛下。 そのくらいで剣をお納めにならないと、マディーナ様のお体に負担が掛かります」 自分たちとは違い、藤也の体躯は、 力を加えれば簡単に壊れてしまいそうなほどに華奢なつくりなのだ。 己の腕にしがみ付く細い腕が、 恐怖とは別にフルフルと小刻みに震え出していることに気づいていたユリアスは、 (そんなことは、お前に言われなくとも分かっておる!) そう心の中で罵るも、己の中にふつふつと煮え立たせている怒りの矛先を失い、 けれど引くに引けなくなった状態をすっかり棚の上に置いた彼は、 こうなると見越して藤也を連れてきたことに、 (余計なことをしてくれたな) とばかり眉間に皺を寄せ、ギロリと鋭い視線でムスタファを睨み上げた。 以外にもあっさりと剣を収めたことに、 身体を小さく丸めるようにして脅えていた侍女は、助かったのだ、 と切実に安堵したその束の間の数秒後。 フンと鼻を鳴らし、極刑に処するのは取り止めてやる、と吐き捨てたユリアスが、 「この者を第一級犯罪者と見なし、ガルド監獄行きとする」 言い放った言葉に、それは間違いだったと再び奈落の底へ突き落とされた彼女は、 苦渋に満ちた顔を呈し、死に物狂いな悲鳴のような声を張り上げて慈悲を請う。 それもそのはず、第一級犯罪者となった咎科人は、 その証として両手の甲と、背中には大きな焼印を押されるのである。 罪人に情けは一切施されないという厳しい掟により、 女だとは言え、焼き付けられる際には、痛みを和らげるものは与えられない。 また、焼かれてただれる傷跡には、治療はもちろん投薬すらなく、 彼らは鎖に繋がれた地下牢で痛みと戦い続けなければならないのだ。 そうして烙印を押されて生死を彷徨い、生き延びた者は監獄へ送られることになる。 それだけでも慄然とするというのに、体力の有り余る男ですら、 灼熱の荒れた地での科せられた重労働に根を上げるという、 最も厳しいガルド監獄へ収容され、彼女は余生を送ることになるのだ。 そんな過酷な運命が待っているということを知らず、 死刑よりも投獄された方が当然刑も軽く、マシだと思っている藤也は、 侍女の慌てふためくその姿に驚きを露にしている中、詰所の扉が開かれた。 その場には似つかわしくないほどに麗麗と着飾ったヒルダ夫人は、 見渡した室内の有り得ない面々を前に、 「……っ!」 声にならない声を漏らし、わずかに片目を細めて反応を見せたものの、 付き人無しという異例の呼び出しに、既に予感もしくは覚悟が出来ていたのか。 はたまた、肝が据わっているのか定かではないが、 只事ならぬ雰囲気に呑まれることなく、中に足を踏み入れると、 床上に蹲る侍女を冷たい眼差しで一瞥する。 〜To be continued〜 |
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