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Fate 60
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- 2008/06/25(Wed) -
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「……ちょ、ユリアス?」
(や、マズイって!マズイでしょ、これ……?!) そう素っ頓狂な声を上げた藤也は、いつになく取り乱さずにはいられなかった。 それもそのはず、 後宮内の一角にある女官長の詰所での一件を落着させ、 残った粗方の用件をムスタファに一任させたユリアスは、何を思ったか。 今まさに、後宮内のメインストリートとも呼ばれている花道を、 堂々と藤也に寄り添いながら歩いている最中なのである。 陽はほぼ沈みかけているとはいうものの、 多くの女官を引き連れての通いは、必然と注目を浴びるらしく、 ほんの数人だったはずの視線も、気づけば群がるような数に膨れ上がっている。 争いごとから離させ、側室たちに余計な刺激を与えないようにと 藤也の安全を第一に考えていたユリアスは、 後宮入りした際には恒例なのだという、お初通いすらしなかったのである。 用心に用心を重ね、真っ黒なものを全身に纏った彼は、 それでも皆が寝静まった更ける深夜まで待ってから藤也の私室を訪れ、 そして黎明を迎え、夜空がうっすらと明るくなりはじめる前に、 ひっそりと私生活の場である正居殿へと戻って行くのが常だったのだ。 それ故、何故なのかと、大きな困惑と戸惑いとで心を乱し、 痛いくらいに突き刺さる視線の山の中心にいる藤也は、 大事にされた、やさしく腰に回されたその腕の温かい感覚さえない。 おそらく数日前なら、 頬を染めながらも、恥ずかしさを訴えるくらいで、 そこまで動揺することはなかったのだろう。 どんなに悪態をつかれようが、後ろ指をさされようが所詮相手はか弱き女性なのだ、 と割り切り、呼吸一つ吐くことで冷静に戻ることが出来ていた彼だったが、 スキャンダラスな事件に巻き込まれ、命を狙われたことにより、 項垂れるような過剰な反応をするのは、当然のことなのかもしれない。 そんな藤也の不安を他所にユリアスは、 それはそれは嬉しそうに微笑みながら歩みを進めるのだった。 ―――そうして、私室の中へと足を踏み入れた大きな窓枠に掛けられた、 コバルトブルー色のクロースが粗風になびいている。 イラスーン王国において王族を表すというその色合いは、 その布が掛けられた私室に国王が滞在しているという証なのである。 それだけでも十分だというのに、通常の訪問時にはないという、 護衛と称して明かりを手にした女官たちが、 私室の出入り口と思われる場所という場所全てに配置されていることから、 もう明日からは平穏な朝を迎えられないのだと、 心中穏やかでない、大きな溜息を漏らす藤也を振り返ったユリアスが、 黒いヴェールを奪い取ると辛そうな表情を見せ、 力強く引き寄せると、ギュッときつく抱きしめたのである。 大好きなお気に入りで、片時も離さずにいたウサギのルビー。 死にかけた、その小動物を思い泣き腫らしたのだと知れるユリアスは、 清らかで、心やさしい藤也を失わずに済んでよかったと痛切に実感した瞬間でもある。 「ちょ、苦しいよ……」 あまりの締めつけに苦痛を訴えるも、 あの恐ろしいまでに冷徹な視線を放ち、威厳があり堂々としていた、 自分を抱きしめている、隆々とついている鍛えられて逞しい屈強の身体が、 細かに震えていることに気づいた藤也は胸がキュンとなり、 逆にギュッとしがみ付いていた。 どのくらいの間、そうしてお互いの温もりを確かめ合っていたのだろうか。 朝からほとんど何も口にしていないというユリアスの為に、 すぐに食事を用意すると開いた口元は、 「……後で構わぬ」 そう告げた熱に孕む、蠱惑に満ちた唇に奪われていた。 交わされたユリアスの熱い口づけは、 匂い立つほどの激しい牡の欲情を明瞭に伝えていく。 そうして、自力で立っていられないほど力が抜けてしまった 身体を抱き留められと、寝台の極上の敷布にそっと降ろされた藤也だったが、 ふと、ほんの少し前のあの痛ましい出来事が目に浮かんでしまい、 「ごめん、そんな雰囲気にはなれない……」 そう口走っていた。 それに、詰所を出る前に、ここのところ忙しくて、 ほとんどまともに休んでいないのだとムスタファが漏らしていたのだ。 そんなユリアスのことを頼まれた身としては、 まずはゆっくり眠って疲れを癒して欲しいと思うものの、 確かに疲れを覚えてはいると認めたユリアスに、 「だからこそ、そなたを感じて満たされたい……」 間近くで、魅せられて離さない、 限りなく深く濃い蒼色の双眼に囚われた彼の心臓は甘美な陶酔に浸り、 トクトクと軽快に音を立てている。 震えがくるほどの精悍な美貌に目を逸らすことができずに、その顔が再び近づく。 そんな雰囲気にはなれないと、漏らした言葉とは裏腹に、 藤也の身体はその先にある、目眩く快楽を得ようと甘く疼き出すのだった。 〜To be continued〜 |
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