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Fate 71
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- 2008/08/01(Fri) -
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的確なまでに信者を次々と増やしていく藤也を見つめ、
はぁ…っと珍しくも憂鬱な溜め息を漏らしたユリアスには、 ここ数日ずっと頭を悩ましていることがあった。 それは二週間後に控えた、祝宴の儀に関することである。 本来ならば正式な手順を踏み、一月の清めの儀の後、 三日掛けて婚儀の儀式を執り行い、国中が祝福に明け暮れるはずなのだが、 既にイラスーンの信仰する太陽神アラヤを祭る神殿で儀式を済ませているのである。 けれど、婚儀の祝賀に各国から訪れる使者と会さないわけにはいかないのだ。 その為に祝宴の儀が開かれるのだが、 何分、この世界には黒い髪はもちろん、黒い瞳を持つ者が居ないのである。 唯でさえ、藤也の絹のような艶やかな漆黒の髪と、 キラキラと輝く珍しい瞳には視線が集まるというのに、 息をするのを忘れてしまうほど、その素顔がとても綺麗であるから厄介なのだ。 無自覚な彼が意図せずに微笑むだけで、 老若男女問わず、その美しい笑みに魅せられてしまうのである。 そんな彼の魔性ともいえる容姿は、例え近親であろうと、 嫁入りするまではその容姿は誰にも見せてはならないというハリファ王国の風習により、 常に被っていた黒く厚いヴェールで隠され続けていたわけだが、 姿を隠すほどの色濃いヴェールとは無縁なイラスーンでは、通用しないのだ。 その為、後宮入りする際には、顔にひどい傷があるというお触れを出すことにより、 黒いヴェール被り続けるという理由を取り付け、凌いできたのである。 ユリアスがそれほどまでにして藤也の容姿を隠したいのは、 トラブルに巻き込まれないようにと、彼の身の保身を考えていることと、 出来ることなら誰の目にも触れさせず、 そしてその黒い瞳に映るのは自分だけでいいのだ、 というユリアスの強い独占欲からとである。 そこで今問題に上がっているのは、 祝賀で着る藤也のドレスをどうするか、ということである。 正確には、このままヴェールを被リ続けるか、取って姿を見せるか、なのだが。 側近の間でも、素顔を隠すのは失礼に値するという意見と、 姿を晒すことにより波乱を招く危険性があると唱える、 正反対の意見が真っ二つに分かれている状態なのである。 いつまでも、答えを先に延ばすことは出来ない問題に浸り、 ひっそりと溜息を付くユリアスは、 「ふぅ……」 間近で自分と同じように溜息を吐き出した藤也に気づいた。 身体の疲れと、余計な神経を使った気疲れが重なっているのだろう。 かなり眠そうな様子である。 寝台に腰を下ろしたまま、 自分の肩に凭れかかるようにして座っていた藤也を抱き上げたユリアスは、 大切な物を置くようにそっと寝台の上へ下ろす。 「……ん。ユリ……アス?」 身体がだるく、いつの間にかうとうととまどろみの中に片脚を入れている藤也は、 横にされてしまうと、直ぐにでも夢の中に飛び立ってしまいそうなほどの、 強い眠気に見舞われていた。 無理に起き上がろうとする藤也の上体をやんわりと静止させ、 押し留めたユリアスは、手に取った薄いタオルケットを上から掛けると、 睡魔で気が虚ろな彼の耳元で囁く。 「今宵、そなたの居殿勤めの者たちによる祝いの夜会が開かれる……」 それまでの間、休むがよい、という言葉を述べる間もなく、 柔らかな寝具にゆったりと身を沈めていた藤也の口元からは、 スースーと安らかな寝息が零れ出していた。 甘く甘く、蕩けるように優しく顔を綻ばせたユリアスは、 労わるような、触れるだけの口付けを仄かに赤く色づく唇に落とし、 「……お休み」 そう届かない言葉を残すと、細々とした執務を任せっきりにしていた、 義兄である宰相のムスタファの元へと向かうべく、藤也の居室を慌しく辞したのだった。 そして国王陛下が正妃を迎えたということは、次の日には国中の知るところとなった。 〜To be continued〜 |
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