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Fate 74
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- 2008/08/07(Thu) -
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出来ることなら、午前の内に一度会って謝っておきたかったと語ったヘレナ王女は、
生死を彷徨ったことなど、なかったかのように無邪気にはしゃぐ、 ルビーに人参スティックをたらふく食べさせると満足の笑みを浮かべ、 午後に備えて自分の居殿へと戻っていった。 同じく食事を終えた藤也は、 セシアの用意した資料に目を通し終えたところである。 「十八歳の若さで、いきなり四人の子持ち。しかも父親ならぬ母親……」 そう、信じられないことに俺は、 ユリアスの子供たちであるルキウス皇太子、第二王子のイザーク殿下、 そしてヘレナ王女とエメリア王女の計四人の子供の母親……つまり後宮離れし、 後宮から出ることの出来ない実母に代わり、育ての母になるわけなのだ。 その顔合わせが、これから正居殿の謁見の間で行われるのである。 因みに明日から二日間に渡り、 一日二回行われるという一般参賀なるものに出るらしい。 (俺のお袋なんて、聞いたらびっくりして……絶対腰抜かすってι) 二度と戻れない遥か彼方にいる母親を想い、懐かしい姿を思い浮かべると苦笑する。 けれど飛ばされたこの世界で、自分の命以上に大切だと思える人と巡り合え、 剰え、その愛しい人の子供たちとも家族になれるのだ。 そう考えたら、感動して胸の奥がじーんとしてしまう藤也は、ちょっぴり涙目になってしまう。 (ヤバッ。これって何か、お嫁入りする花嫁さんの気持ちみたいじゃん?!) 降って湧いた恥ずかしさに、ゴシゴシと目を擦るも、 ハーブティをグラスに注いでいるセシアは、その様子には気づかないまま、爆弾発言を落とす。 「十年後には、お孫様のお顔が見られるかも知れませんね」 「ゲッ! 二十八で俺……おばーさんっ?? 嘘、マジでぇ?!」 日本とは異なり、この世界の女の子たちが、 早ければ十五歳で嫁ぎ先が決まるということをすっかり忘れていた藤也は、 びっくりして、それこそ腰を抜かしかける……いやいや、椅子から滑り落ちそうになった。 (ほんと驚くことばかりだよな、この世界って) はぁっ…と溜息をついたものの、 前髪を掻き上げながら仄かな幸せに浸る彼は、気を取り直すと椅子に座り直す。 そうして冷たく冷えたハーブティーで喉を潤した藤也の視線は再び、 テーブルに置いた上の子供たちの資料へと注がれていた。 「ルキウスとヘレナは良いとして……。問題はイザーク王子とエメリア王女だよな」 少し困ったような表情で頬杖をついたのには分けがあった。 イザーク王子は、高価なものばかり食べる母親の影響の所為か栄養が偏り、 超がつくほどの偏食者らしいのだ。 しかも、時々原因不明な呼吸困難を起こすらしく、担当の医師たちも困惑しているらしい。 そしてエメリア王女の方は、これまた超がつくほどの人見知りなのだという。 「実の父親にさえ人見知りするんじゃ、俺なんて完璧ダメじゃんι」 口を尖らせてぼやきを見せる藤也は、 前途多難な問題に頭を悩ましながらも、時間は刻々と過ぎていく。 華美でなく、子供たちとの顔合わせに相応しい清楚で温かみを与えるドレスに着替えると、 今までの黒くて厚いものではなく、 豪華なレースを淵にあしらえた白いヴェールが頭上に掛けられる。 女官長曰く、王城内に限り白いものでいいらしい。 とは言うものの、これでもかという程のドレープ仕様である。 顔の前面にも襞が贅沢なまでにも重なり合う為に視界も甚だしく悪く、 間近かに寄った者でなければはっきりと容姿を伺い知ることはできないだろう。 それでも、ヴェールを被ること自体が珍しいとされるこのイラスーンでは、 薄絹で顔を隠す藤也の出で立ちは神聖な雰囲気を醸し出し、幸か不幸か、 その纏う清らかで尊いオーラが彼の美貌を一段と相乗させる効果に拍車を掛けている。 その美しい装いで静々と中央の赤い絨毯を進むように見える姿に恍惚とし、 うっとりと見つめてしまう居殿内に勤める多くの女官たちは、 (このヴェール、意外と見えにくいし、こけたら……洒落になんないよな) と、彼女たちが想像する高貴なお方とは程遠く、 二年経った今でも、鬱陶しいものでしかないと愚痴を零す藤也が、 ドレスの裾を踏んで転ばないようにと必至になっていることを知らないのである。 そして何より、 そもそも子供たちに会うというのに、ヴェールを付けること自体変だと考える彼自身も、 ユリアスが藤也の容姿を極力誰の目にも触れさせたくないと思っていようなどとは、 知る由もないのだった。 〜To be continued〜 |
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